上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

退職した中高年は心臓病リスクが低くなる…考えられる理由

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 退職して働くのをやめた中高年は、心臓病のリスクが低い--。今年5月、そんな研究結果が報告されています。

 京都大学などの研究グループが、日本をはじめ米国や中国など35カ国の中高年(50~70歳)約10万人を対象に平均6.7年間追跡調査した結果、退職した人は働き続けている人よりも心臓病のリスクが2.2%低いことがわかりました。この数字は、仮に国内の60代就労者が全員退職した場合、心臓病の患者が約20万人減少するのに相当するそうです。

 この調査では、健康な人ほど仕事を続けやすいという偏りを取り除く統計手法を用いたうえで分析したもので、デスクワークが中心だった人は、退職すると心臓病や肥満、運動不足のリスクが低下していたといいます。

 逆に就労者は、ランニング、水泳、ゴルフといった運動をする機会が少ない傾向が確認され、運動不足が心臓病のリスク増につながっている可能性が指摘されています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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