時間栄養学と旬の食材

【牛乳】夕方に果物と一緒に取ると骨を丈夫にしてくれる

牛乳
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 牛乳は基本的に一年中流通していますが、牛乳中の脂肪が高くなる時季は冬! 寒い冬を乗り越えるために脂肪分の高い濃いミルクが出るのが特徴です。

 ミルクという言葉自体は、紀元前4000~3000年にできたといわれているそうです。メソポタミア文明やインダス文明のころの古い書物を見ると、確実に乳製品としての位置付けがなされていたことがうかがえます。

 日本へは中国から朝鮮半島を経て伝わったとされ、日本最古の医学書「医心方」にも薬のように飲むよう記載があります。その後、薬のイメージが抜けきらないことや、軍馬の飼育に力を入れていたことから広まらなかった酪農文化ですが、それが再び注目されるようになったのは徳川吉宗が房総に馬と牛の牧場をつくったのがきっかけ。初めは肺結核や感染症の薬やサプリメントなどがつくられ重宝されていました。明治以降になって乳製品は普及し、第2次世界大戦後には子供の栄養補助のため、学校給食で牛乳が広まるまでになりました。

 そんな牛乳に含まれる栄養素で最も着目したいのはなんといってもカルシウム! 骨や歯の健康に不可欠な栄養素で、成長期の骨形成や骨粗しょう症予防に役立ちます。一緒に含まれる乳糖やカゼインホスホペプチドは効率的なカルシウムの吸収を助けてくれるのです。また、乳糖が乳酸菌の増殖を促し、善玉菌のバランスを整え、便通を改善することもわかっていますし、良質なタンパク質も豊富に含まれます。

 朝に炭水化物と一緒に取ると牛乳に含まれるタンパク質の働きと相乗効果で朝から元気に活動できる体がつくられ、便通を促進してくれるという報告もあります。一方で、カルシウムの吸収がアップする夕方以降の時間帯の摂取は骨を丈夫にしてくれる働きが期待できる可能性も! 特にリンゴ酸やクエン酸が多い果物などと取ると、大腿骨のカルシウム利用率が上がったという報告もあります。

 また、牛乳に含まれるオリゴペプチドは高血圧を予防し、血圧調節に影響するホルモンの生成を抑制します。同時に、牛乳中のラクトフェリンは抗菌作用を持つことが知られています。

 さらに、具体的なメカニズムに関してはまだ不明ですが、女子大生が4週間牛乳を取ると体脂肪率が減少したという報告や、放課後に牛乳を飲む習慣を身につけた子供の空腹感・間食の減少、落ち着くようになったという研究も。目的に応じて摂取時間帯を考えていきたいですね。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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