介護の不安は解消できる

地域で実施されている「認知症予防教室」ってなんだ?

化粧教室は同じ年代の女性同士で会話が弾みやすい
化粧教室は同じ年代の女性同士で会話が弾みやすい

 総務省統計局によると、今年9月時点でのわが国の総人口のうち、高齢者が占める割合は29.1%で、過去最多を記録したとのことです。近年の超高齢社会への突入に伴い、各市区町村ではさまざまな地域支援事業が行われています。

 そのひとつが「認知症予防教室」です。認知症発症のリスクの低減を目的に、地域の健康プラザなどで認知症に関する講座、認知症予防に有効とされる脳トレ、運動指導が行われています。認知症と診断されていない65歳以上の高齢者を対象に、NPO法人や民間企業、近隣のクリニックや大学病院に勤める医師、理学療法士や作業療法士、介護施設職員によって開催されています。

 そのため、実施されるプログラムの内容はその都度異なり、認知症という病気への理解や認知症予防にまつわる講座、参加者同士で絵本の読み聞かせをしたり、その地域にある公園でのウオーキングなど、さまざまなプログラムが行われています。

 なかでも印象的と感じたのが「化粧教室」です。高齢になると、病気など外出する機会が減り、化粧をしなくなる方が少なくありません。化粧を通して若々しくなった自分の姿を見たり、他人に褒められると自信がつき、社会参加への意欲が高まるといいます。また、化粧教室では「どうしたら上手にできるか」など、同じ年代の女性同士で会話が弾みやすい。

 会話は、伝えたい思いを言葉にしたり、聞いた内容を理解する際、左脳にある大脳皮質前頭葉、脳の大脳皮質側頭葉が働きます。また、相手の感情を読み取ろうとすると右脳が働くので、脳がフル回転します。独居など、普段は他人と話す機会が少ない人でも、教室を通じて他者とコミュニケーションを取ると脳が刺激を受けて活性化し、脳に酸素や栄養を届ける血流が良くなり、認知機能低下をより予防します。

 ほかにも、定期的に通うことで「最近来なくなったね」「前よりも物忘れが増えたね」など、周囲が本人の異変に気付き、認知症の早期発見にもつながります。

▽橋本将吉(はしもと・まさよし)2012年3月、杏林大学医学部医学科卒業、14年4月、医療法人社団洪庵会常勤医師、19年、現在の「東京むさしのクリニック」開業。日本で唯一の医学生のためだけの個別指導塾「医学生道場」を運営(https://igakuseidojo.com/)。

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