科学が証明!ストレス解消法

ジョギングをすると「セロトニン」の受容体が活性化する

気分が落ち込みそうになったらジョギングをしに
気分が落ち込みそうになったらジョギングをしに(C)日刊ゲンダイ

 嫌なことやストレスがたまっているときはジョギングをすると気持ちが向上していくということが判明しています。しかも、物理的な理由が存在するというから驚きでしょう。

 東京大学のリューらの研究(2020年)では、走るときに一歩一歩、頭部に衝撃がかかることで脳から分泌される物質が活性化されることが実験で示されています。

 実験では、マウスを1週間、トレッドミル(ランニングマシン)で走行させ、どのような反応を脳が示すかを調べました。1日30分ほど走らせたところ、覚醒、気分、記憶、そして自律神経調節などと関係するセロトニンの受容体が活性化されていることがわかりました。

 驚くべきはその効果です。仮に1週間ジョギングを続けると、最後の運動から「72時間以上1週間まで」は効果が持続することがわかったそうです。気分が落ち込みそうになったらジョギングをしにいく。しかも、継続すれば自律神経の調節機能も改善されて、元気な体質になっていくというわけです。外気を吸うだけでも気分転換によさそうですし、その効果は科学的にも実証されているのです。

 また、ジョギングをする前に入念にストレッチをしなければいけないと思われがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。以前、当コラムで、欧州スポーツ医学会が「運動前のストレッチングは筋力やジャンプなどのパフォーマンスを改善するエビデンスに乏しい」と発表(06年)していることに触れましたが、米国の陸上競技連盟も同様の見解を示しています。

 同陸上競技連盟は13~60歳の1400人を対象に運動前のストレッチの効果について調査(10年)しました。「運動前にストレッチを行うグループ」と「行わないグループ」に分けて比較したところ、双方ともに同じくらいの割合でケガをし、1週間程度ランニングを休む結果となったと報告されています。

 丹念にストレッチをすること自体は悪いことではありませんが、「必ずストレッチをしなければいけない」と思い込む必要はないのです。軽い気持ちで走り出してみることが大事なんですね。

 走ることが苦手という方は、肥満、高血糖、高血圧など心臓血管系の罹患リスクを抑制する運動療法として注目されている「スロージョギング」をしてみてはいかがでしょうか。スロージョギングは、歩く程度の速さでゆっくりと走るジョギングのことです。

 一般的には、1分間小さな歩幅でゆっくり走り、その後、30秒ゆっくりと歩く──。このセットを繰り返すだけです。体に負担がかかりにくいため高齢者も無理なく続けられ、ウオーキングに比べてエネルギーを2倍消費するといわれています。

 寒い冬はなかなか外に出て運動をする気になれないと思います。一方で「運動はした方がいい」と思っている方も多いはず。スロージョギングを含めた無理のない程度のジョギングなら、コンビニに行くついでにできると思います。ストレッチにこだわる必要もないので何かのついでにジョギングを取り入れてみましょう。

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堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円) 

堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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