時間栄養学と旬の食材

【はんぺん】牛肉並みのタンパク質量ながら低エネルギーで朝食におすすめ

はんぺんは室町時代の料理本にも
はんぺんは室町時代の料理本にも

 おでんの中でも老若男女に愛されるはんぺんは室町時代から料理本に記載されるほど古くから存在しています。駿府の膳部半平が最初に作り、その名が「はんぺい」から「はんぺん」へと変化した説、「かまぼこのはへん」から名づけられた説、平家追討時の源氏方の武士「半兵衛」を略した説、はんぺんの形や素材が由来とする説、さらにはこじつけに近いエピソードなど語源は多岐にわたります。

 関東でポピュラーな四角や丸の白い「浮きはんぺん」、イワシやサバなどを丸ごと一匹入れた黒い色が特徴の静岡名物「黒はんぺん」、山芋ですり身をのばすため気泡剤を使わず手作りされる「伊勢はんぺん」、カラフルで長崎ちゃんぽんの具材でも有名な「長崎はんぺん」、あご(トビウオ)のすり身で作りかまぼこに近い食感の「あごはんぺん」、ハモのすり身を主原料にしてシログチなどを混ぜて作られる「あんべい」など種類もさまざまです。

 大きいサイズのはんぺん1枚(100グラム)は9.9グラムのタンパク質と1グラムの脂質で構成されています。

 同量の牛肉や鶏卵と同程度のタンパク質を含みながら、エネルギーはなんと牛肉の3分の1という低エネルギーっぷりも魅力です。

 牛肉の倍以上の消化率を有するほど消化吸収が良いことや、主原料のひとつでもある魚がふんだんに含まれている点も加味すると、育ち盛りの子供や食生活に気を使うご年配の方までおすすめの食材です。

 ただし、摂取量には注意が必要! 100グラム中の塩分は1.5グラムなので、1日の塩分摂取目標量(男性7.5グラム、女性6.5グラム)を考えながら食べる必要はありそうです。とはいっても、ウインナー100グラム(約4~5本)の塩分は1.9グラム、しらす干し1食(25グラム)は1.7グラムであることを考えたら、敬遠するほど多すぎるわけではなさそうですね。また、100グラム中の糖質が11.4グラムなのも、砂糖を多く使ったスナックやジュースと比べると低いですが、糖質制限中の方は適切な摂取量を守りながら取り入れることが大切でしょう。 

 ラットの実験にはなりますが、はんぺんを含む飼料を与えると善玉コレステロールが増え、LDHが下がって肝機能の悪化を抑制することもわかっています。

 朝からシャキッと活動するためにも朝食にぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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