独白 愉快な“病人”たち

映画コメンテーターの有村昆さん 白内障の手術を受けて感動したこと

映画コメンテーターの有村昆さん
映画コメンテーターの有村昆さん(C)日刊ゲンダイ
有村昆さん(映画コメンテーター/47歳)=白内障

 数年前からずっと視界に白いものがチラチラしていたんですよ。特に左目なんですけど、霧がかかったような見づらい状況が続いておりました。

 年1回の健康診断でも、「ちょっと白内障の気がある。確定ではないけれど、どうにかしないとゆくゆくはどんどん見づらくなりますよ」と指摘されていました。

 映画コメンテーターという仕事柄、目を酷使しがちなんですよね。でも忙しかったこともあって、ついつい先送りにしていました。案の定、年々症状が進み、一昨年の春にだいぶ見えなくなってきたので眼科を受診したのです。

 目を細かく検査したら、ちゃんと「白内障」と診断されて、眼内レンズを入れる手術をすることになりました。目の曇った部分を取り除き、人工レンズを入れるという手術です。実際、時間にして15分ぐらいのものでした。

 まず、椅子に上を向いて座って、まぶたが開きっぱなしになるように目の周りの肉を外側に引っ張る器具で固定されました。その無防備な目に点眼麻酔が落ちてくるんです。ご存じの方はわかると思うのですが、映画「時計じかけのオレンジ」の中のワンシーンを思い出してしまいました。その後も点眼薬がずっと目を潤してくれるので、視界は常に水が流れている感じで何をされているのかはまったく見えませんでした。

 事務所近くのその眼科では手術だけの日があって、手術する患者さんがズラッと並んで、流れ作業のように次から次へと手術室に入っては、片目を押さえて出てくるのです。だから手術前はドキドキしましたが、術後は余韻に浸る間もなく、ただ押し出されるようにして手術室を出ました。

 日帰り手術なのでその日は家で安静を保ち、翌々日にはもう普通に仕事をしました。

 その1カ月後くらいにもう片方の目も手術して、裸眼でなんでも見える生活がスタートしました。あまり知られていないかもしれませんが、眼内レンズは、左右で違う度数のものを入れるのが一般的なようです。なぜかというと、両目とも遠くに焦点を合わせてしまうと、近いところがぼやけてスマホなどの字が見えないからです。私の場合は、左目は近視気味、右目は遠視気味になるようにレンズの度数を設定しました。それによって気分が悪くなる人もいるようですが、私は脳がうまく処理してくれて、とてもいいバランスで見えるようになりました。

 ただ、車を運転するときやパソコンなど手元で長く操作するときはメガネをかけます。そのメガネのレンズは、遠くが見え過ぎている右目の視力を落とすようなもので、左目は度数がほとんど入っていません。眼内レンズの左右差を必要に応じてメガネで調整するのです。

映画コメンテーターの有村昆さん
映画コメンテーターの有村昆さん(C)日刊ゲンダイ
コンタクト着脱のわずらわしさから解放された

 それまでは、近視でコンタクトレンズを着ける毎日だったので、朝起きてすぐ視界がクリアなことには感動しました。コンタクトレンズを着けたり外したりするわずらわしさから解放されたことだけでも、手術をして本当によかったと思っています。地方に行くことも多いので、うっかり忘れたり、なくしたりすることを考えるとなおさらです。

 今は、白内障で眼内レンズを入れる手術は保険内診療になったので、片目6万円ほどでした。使い捨てコンタクトレンズの料金もバカになりませんから、そのコストを考えたら経済的にも悪くない選択です。若い人には視力矯正のために眼内レンズを入れる人が増えているようですけれど、視力矯正だと保険外なんですって。やることはまったく同じだから、白内障になった人は眼内レンズがおすすめです(笑)。

 私はフットワークが軽いほうなんですけれど、病院へ行くことをためらう人も多いでしょう。でもこれだけ医療制度が充実していて、医療の水準も高いので、先送りにしないで早めに受診したほうがいいですよ。白内障に関しては実体験として特にそう思いました。ただ、眼内レンズも35年ぐらいで濁るそうなので、私は70代でまたやるのかなと思います。

 3年前、個人的にいろいろありました。それまで仕事一辺倒で突っ走っていましたが、今は子供と向き合う時間も増えました。結果、少しでも清潔感のあるパパでいたいと思うようになりまして、シミ取りやマウスピース矯正(歯列矯正)などチャレンジしています(笑)。

 一応、表に出る仕事なので最低限の身だしなみは心がけていきたいと。そして健康を考えて、フィジカル的にもメンタル的にもいいことを取り入れようと思い、サウナや筋トレにも通っています。どうせオジサンなんですけど、子供を守るためにも私自身が健康であることが大事だなと。どこか壊れてからじゃなく、普段からのメンテナンスを意識すべきだと思い至りました。

 白内障の手術もこのマインドの一環です。コンタクトレンズのいらない世界は本当に便利です。 (聞き手=松永詠美子)

▽有村昆(ありむら・こん) 1976年、マレーシアで生まれ、6歳で日本に帰国して東京で育つ。大学卒業後、FMラジオのパーソナリティーとしてデビュー。長年、ラジオでの活動を続けている。そのほか雑誌やテレビなどで映画コメンテーターとして活躍しており、年間500本以上の映画を鑑賞している。

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