ここ10年くらいで「配合錠」というクスリをよく見かけるようになりました。高齢者の中には、すでに配合錠を服用・使用している方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
配合錠とは、その名の通り複数の種類の成分が1つの錠剤に配合されているクスリです。2種類の成分が配合されているものがほとんどですが、一部には3種類の成分が配合されているものもあります。
配合錠の多くは、1つの疾患の治療を目的として効き方が違う成分が配合されています。例を挙げると、高血圧の治療を目的として効き方の違う複数の降圧剤の成分(血管を広げる成分と尿を出す成分など)が配合されているという感じです。
他にも、高脂血症治療薬、糖尿病治療薬に配合錠があります。また、異なる疾患の治療のためのクスリが配合されているものもあり、高血圧治療薬の成分と高脂血症治療薬の成分、血をサラサラにする薬剤の成分と胃酸を抑える薬剤の成分といった具合でバリエーションに富んでいます。
配合錠のメリットとして、今まで一度に2種類、3種類の錠剤を服用しなければならなかったところが、1つの配合錠で済むことが挙げられます。つまり、単純に服用する錠剤の数を減らすことができるのです。いくつもの疾患の治療をしていて、1回に服用しなければならない錠剤の数が多い場合には、とても有用なものだと思います。「クスリの服用が楽になる」ということは、継続的に治療を行っていくうえでも非常に重要なことです。
しかし、もちろんデメリットもあります。たとえば、配合錠を服用し忘れた場合、少なくとも2種類の成分を服用できなかったということになるので、一度の忘れの影響が大きくなる可能性があります。
そして私が考える最大のデメリットは、「どちらか一方の成分だけを中止・減量することができない」という点です。配合錠に含まれる一方の成分による副作用が疑われ、それだけを中止したいとなっても、配合錠ではできないのです。もしそうしたければ、改めて継続したい成分だけを含むクスリを処方し直す必要があります。医療現場ではしばしばこういったケースに遭遇しますし、対処に苦慮することもあります。
複数の成分が1つのクスリに配合されているものは錠剤だけでなく、吸入薬にも同じようなものがあります。いずれにしても、配合されることによるメリットとデメリットをしっかりと見極めたうえで、そうしたタイプのクスリを選択するかどうかを決めたほうがよいでしょう。患者さんのニーズに合えば、配合錠はとても有用なクスリであることに間違いはありません。
高齢者の正しいクスリとの付き合い方