正解のリハビリ、最善の介護

リハビリ主治医の力量として「投薬管理」が重要なのはなぜか

ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ

 より良い回復期病院を見極めるポイントとして、「リハビリ主治医の力量」が重要だとお話ししました。そのひとつとして、「患者さんが飲んでいる薬のコントロールを適切に行えるか」が挙げられます。睡眠障害や痛み、覚醒障害などがあってリハビリがうまく進まない場合、主治医が原因を把握して、適切に投薬を管理できるかどうか。それが患者さんの回復を左右するケースが少なくないからです。

 当院の介護老人保健施設(老健)に入られた60代の女性は、脳梗塞を発症して治療が終わってから、13カ月にわたって意識障害が続いていました。ずっとボーッとしたままで、話をしてもろれつが回らず、ベッドから車いすに移動する際も重介助が必要でした。前医の回復期病院で「脳梗塞の影響だから仕方がない」と言われたうえに、転倒で脳出血も生じて治療したそうです。

 しかし、脳の画像を見る限り、軽症の脳梗塞で、脳損傷もなく、1年間も意識障害が持続する病態ではありません。「これはおかしい」と思い、患者さんがそれまで飲んでいた薬をチェックしたところ、2種類の抗てんかん薬が大量に投与されていました。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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