健康長寿に役立つ高齢薬膳

【菊花】こもった熱を冷まし、薬膳では目のトラブルに必ず使われる

目薬菊花茶
目薬菊花茶(C)日刊ゲンダイ

 目がかゆい。しばしばしてひどく疲れる……。花粉症による目のトラブルに悩んでいませんか? 「花粉性結膜炎」は、特定の時期のみ症状が現れる季節性アレルギー結膜炎のひとつです。結膜は外界に直接触れているため、花粉が入りやすい状態にあります。さらに花粉は涙液に溶けやすいため吸収されたり、タンパク質や細胞も多いためにアレルギー症状が引き起こされやすいのです。

 症状としては目のかゆみや痛み、充血、ゴロゴロとした異物感、疲れる、まぶたが腫れるなどといった症状がみられます。

 以前は、年齢が上がると花粉症になりにくいといわれていましたが、現在はシニアでも発症する人が増加傾向にあります。命に関わるわけではありませんが、目の不調は首や肩のこり、集中力の低下、イライラするといった生活の質を大きく下げる原因になります。この時期はとくに「食」による対策も必要です。

 中医学においては、花粉症を引き起こす原因として人間のエネルギー源である「気」が関係していると考えます。気が不足すると免疫力が低下し、抵抗力がなくなるのでアレルギー物質が侵入し、症状が発生してしまうのです。

 花粉症は症状によって対策が異なりますが、目にトラブルが起きる場合は、おおむね身体の上部に余分な熱がこもっている状態と考えます。

 さらに目は、中医学で「肝」と呼ばれる臓器と関係が深く、肝の機能が低下すると、目の疲労につながりやすいといわれています。じつは、春は肝と関連の深い季節。気温の上昇とともに体内のエネルギーも高まり、それに伴い肝の働きが過剰になって、バランスを崩しやすいのです。つまり春はそもそも目のトラブルが多い季節で、花粉の影響も受けやすいのです。

 改善のためには、体の上部の熱を冷まし、肝をサポートする食材を取り入れることが大切です。

 おすすめは菊花。乾燥させたものは生薬としても使われ、薬膳において目のトラブルには必ず使われる食材です。身体の上部にこもっている熱を冷まして、花粉症による目の不調をスッキリさせるのに役立ちます。疲れ目、目の充血、ドライアイなどにもよく、まさに「目薬」のような存在なのです。花粉症による鼻やのどのかゆみ、鼻づまりにも効果があります。

 また、ストレス解消にも効果大。ストレスがたまっている状態とは、中医学では人間のエネルギー源である「気」の流れが滞った状態と考えます。気の巡りは西洋医学の自律神経に重なり、そのコントロールがきかずに精神不安定となり、イライラしたり、怒りっぽくなると考えます。菊花は気の巡りをスムーズにして、イライラした気分を鎮めてリラックスさせてくれる働きがあるのです。

 食用菊が入手しづらい季節は、通年使える乾燥品が便利。中華食材や中国茶を扱う店舗で入手可能なので、お茶にしてこまめに飲むとよいでしょう。お刺身をいただくときは「小菊」も食べることを忘れずに。花びらの部分をしょうゆに入れて、刺身と一緒に食べると美味しくいただけます。

 また、身体に熱を持たせる唐辛子、ニンニク、スパイスなどが過剰にきいた料理は、症状を悪化させるので控えましょう。

 菊花の花粉症による目の不調を改善する効果を高めるには、同様の効能を持つミントや緑茶と組み合わせるとよいでしょう。目のトラブルによいクコの実も取り入れるとさらに効果的です。

■菊花高齢薬膳レシピ

目薬菊花茶

 目のトラブルに威力を発揮する菊花、ミント、クコの実を組み合わせたレシピ。花粉症だけではなく、普段から疲れ目にも効果的です。さわやかな香りで、飲むと頭や目がスッキリ。ストレス解消にもおすすめです。

【材料】2人分
●菊花(乾燥) 大さじ2
●クコの実 大さじ2
●ミント(生) 5g
●熱湯 カップ2

【作り方】
 カップに熱湯を注ぎ、菊花、クコの実、ミントを入れて、3分程度蒸らす。

池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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