働き世代 がんになったらお金はどうする~会社員編~(2)頼りになるのが傷病手当金

休職して治療に専念できる?
休職して治療に専念できる?

 肺がんで抗がん剤治療を受けている30代会社員Aさん。有給休暇を使い終わった後は復職の予定でしたが、思った以上に抗がん剤治療による体力低下が著しく、復職は難しいかもと感じていました。休職(=無給)となると今後の生活はどうなるのか──。

 Aさんが調べたところ、会社が加入している健康保険組合では、傷病手当金として給料の約3分の2の額が1年半支給されるとのこと。また就業規則では、傷病手当金が受給される1年半は休職期間として定められていることも確認できました。

 復職できなければ解雇もあり得るのではという不安を抱えていたAさんでしたが、生活費に関する心配は少し軽減され、体力を取り戻すまでは休職し、治療に専念することを決意したのでした。

 なお、傷病手当金がいくらもらえるのかを考える際に大事なのが、支給額と手取り額が違うということです。給料から天引きされていた健康保険料や年金などの社会保険料は免除されないため、休職中でも払い続けなくてはならないからです。

 たとえば標準報酬月額(年金額の計算の時に使われる金額)が30万円の方は、傷病手当金として3分の2が支給されるとすると、休職中も20万円受け取れる。しかしここから、社会保険料が引かれるので、「思っていたよりもらえるお金が少なかった!」となることもあります。

 加入している健康保険組合によっては、組合独自の「付加給付」が利用できる場合があります。Aさんのケースでは、加入している健康保険組合で、1カ月の医療費の上限が3万円。高額療養費の利用で医療費が9万円/月に抑えられていましたが、健康保険組合の付加給付の利用で、「9万円-3万円」の差額6万円が数カ月後Aさんの口座へ振り込まれることとなりました。

 付加給付は健康保険組合によって名称、金額、時期などが異なり、また付加給付がない健康保険組合もあります。加入されている組合に確認してみてください。

▽黒田ちはる 看護師としての経験を生かし、看護師FP(R)としてがん患者の家計相談に乗る。黒田ちはるFP事務所代表、一般社団法人患者家計サポート協会代表理事。著書に「がんになったら知っておきたいお金の話」。

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