役に立つオモシロ医学論文

B型はがんになりにくい 1万8000人の中国人を25年追跡調査

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 血液型の分類にはさまざまなものがありますが、一般的には「ABO式」が有名でしょう。血液型と関連性があるものとして人の性格や体質などが挙げられますが、関連性には否定的な指摘も多く、明確なことはよく分かっていません。

 そんな中、ABO式血液型とがんの発症リスクを検討した観察研究の論文が「プロス ワン」という科学誌に2017年9月7日付で掲載されました。たしかに、ABO式の血液型は遺伝的な特性ともいえるので、遺伝と関連性のあるがんの発症頻度と何らかの関係性があると考えても違和感はありません。

 この研究は1万8244人の中国人男性を25年間にわたり追跡調査し、A型と比較した各血液型のがん発症リスクを検討しています。解析にあたっては、結果に影響しうる年齢、飲酒・喫煙状況などの因子で統計学的に補正を行っています。

 研究の結果、がん全体の発症率はA型と比べてB型では9%統計的にも有意に減少していました。しかしながら、AB型、O型ではそれぞれ明確な差は示されませんでした。

 また、がんの種類別に発症率を検討したところ、A型と比べて、B型では胃がんが25%、大腸がんが22%、膀胱がんが36%減少しました。AB型では大腸がんが32%減少しましたが、肝がんは45%増加するという結果でした。O型では全てのがんについてA型と明確な差を認めませんでした。B型では特に消化器系のがんや膀胱がんの発症リスクが低い可能性が示されています。

 とはいえ、がんの発症にはさまざまな因子が関わっているので、本研究結果が必ずしも因果関係を示しているわけではありません。そのメカニズムを含め、今後の研究報告に注目したいと思います。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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