これで「物忘れ」は怖くない

認知症と間違えやすく…「治る物忘れ」を正しく知る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 年齢とともに増える物忘れ。その原因は、海馬にある神経細胞の機能低下にあった。加齢により低下した認知機能が回復することはあるのだろうか? 眞田クリニック(東京・大田区)の眞田祥一院長は言う。

「単なる物忘れや認知症は、残念ながら元通りになることはありません。しかし、物忘れの原因が他の病気であれば、治療によって回復する可能性は大いにあります」

 物忘れの原因となる病気には、たとえば脳血管障害やくも膜下出血といった脳の病気や、慢性硬膜下血腫という脳の外傷がある。脳の血流が悪くなったり、脳内に血の塊ができたりすることで機能が低下するのだ。

 ほかにも、甲状腺機能低下症やパーキンソン病、うつ病など、脳の機能低下を招く病気は珍しくない。

「病気が原因の場合、その治療を適切に行えば高い確率で認知機能が回復します。いまだ治療法のないアルツハイマー病などに比べると、ラッキーな“認知症”といえます」

 眞田院長がクリニックで行った調査では、何らかの病気が原因の認知症4000例のうち、改善例は2500例にも上った。

 改善率を見ると、脳梗塞と正常圧水頭症(くも膜下出血)は67%、慢性硬膜下血腫は83%。甲状腺機能低下症に至っては、100%の患者が認知機能を回復している。

「意外なところでは、貧血が原因で物忘れが起きることもあります。そういう場合は、鉄剤を投与するだけで治ってしまうことがほとんどです」

 この結果から、物忘れが気になるようになったら「ついにボケたか」などと嘆く前に、専門の医療機関を受診すべきだということがよくわかる。

 なお、行われる検査は認知機能検査のほか、脳のMRIや血液検査など。さまざまな病気の可能性を探ることができるのは、専門医ならではだろう。

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