独白 愉快な“病人”たち

1年間病院を転々 水野タケシさんの座骨神経痛“難民”時代

コピーライターで川柳作家の水野タケシさん
コピーライターで川柳作家の水野タケシさん(C)日刊ゲンダイ

「イタタタタ、アイタタタタタ、イタタタタ」

 これは2017年の一句です。去年はずっとこの痛みに支配されていました。

「座骨神経痛」とわかったのは、昨年の年頭。クロスバイク(スポーツ自転車)で10キロほど走った後、自宅に戻ると腰に違和感があり、「あ、またギックリ腰だな」と思ったのです。

 ボクはこう見えてランニングも趣味で、毎日10キロ走っていました。年に2~3回は寒い時季にギックリ腰になるのです。ランナーのギックリ腰はさほど珍しくありません。いつも、3~4日もすればだいたい良くなっていました。

 ところが、去年のそれはなかなか治らず、「変だな」と思っているうちにだんだん悪化していきました。いつしかあおむけで寝られない状態になり、さらに左脚だけ膝下の感覚がなくなってきたのです。さすがに怖くなって、行きつけの整形外科医院を受診しました。レントゲン検査の結果、「第4と第5の腰椎の間隔が狭くなっています。座骨神経痛ですね」とのことでした。腰椎のヘルニアが座骨神経を圧迫していたわけです。

 それがボクの「座骨神経痛難民」の始まりです。このあと1年間、病院を転々としました。

 まず、その行きつけの整形外科では電気治療とマッサージ、細かく振動するウオーターベッドのようなベッドの上に寝るといった治療を週に1~2回受けました。しかし5月になってもぜんぜん治りません。

「病院を替えよう」と意を決して次に行ったのは、やはり家の近所の整形外科医院。そこでは座骨神経痛についての丁寧な説明があり、自宅でできるストレッチの方法を伝授されました。でも、そのストレッチが痛くてとてもじゃないが続かない。通院したところで治療は電気と「ボルタレン」という鎮痛剤の処方で、まったく改善せず途方に暮れました。

■鍼灸と整体の先生の間に“格差”

 その頃、仕事仲間で「暮らすめいと」という新聞の編集長にさりげなくグチると、くしくも彼女も同じ座骨神経痛仲間で、「それは鍼灸じゃなきゃ治らない」と助言されました。看護師の妻にその話をすると、通っているヨガの先生に聞いてくれて、市内のいい先生を教えてもらったのです。残念ながら自宅から遠かったため、そこには行きませんでしたが、鍼灸という新たな活路が見えた瞬間でした。

 整形外科で挫折した後、近所にある鍼灸もやっている整骨院を訪ねました。初めての鍼治療は少し良くなった気がして翌日も行ったのですが、何となく院内の雰囲気が怪しいんです。どうやら鍼灸と整体の先生の間に見えない格差があって、鍼をお願いしづらい空気を出し始めたんですよね(笑い)。院内が不潔だったこともあって、「こりゃだめだ」と早々に切り上げました。

 まだあおむけで寝られない状態が続く中、「次こそは」と意気込んだ4軒目は駅前まで足を延ばしました。そのかいあって、やっといい鍼灸の先生と出会えたのです。9月から週2回、それまでにない幸せな通院生活でした。ただ、そこもやはり鍼灸の先生の立場が若干弱くて、整体とセットのパターンになってしまい、結果としてかなり高額でした。しかも、12月でその鍼の先生が辞めてしまい、また難民に逆戻り。おまけに大掃除で無理をして、良くなりかけていた症状も逆戻りしてしまったんです。

■男性にとっても「冷え」は大敵

 そこで思い出したのが、自宅からはちょっと遠い、例のヨガの先生推薦の鍼灸師です。もう遠いなんて言っていられませんでした。実は今日もそこへ行ってきた帰りです。今日で4度目。電話番も置かず、たった一人でひっそりやっている先生で、みっちり45分の施術を受けています。

 鍼はまったく痛くないから寝ちゃうくらい。週1回、行くごとに良くなっているのを実感しています。それでいて値段が安くて何より若くてイケメンなのがいい(笑い)。

 その先生によると「座骨神経痛は横隔膜が大事」とのこと。つまり呼吸が大切で、横隔膜が硬いといろんなところに影響が出るみたいです。鍼灸専門だけど、立ち姿勢や関節の可動域など今まで気付かなかった自分の体のゆがみやクセをわからせてくれるんです。「冷え」もダメ。女性だけかと思ったら、男性にも大いに関係あるんですって。

 ボクのように座骨神経痛難民の人はたくさんいると思います。でも、ごめんなさい。先生の名前や場所は明かせないのです。ただ、いい先生は本当にいいですから、いろんな人のつてを頼って諦めないで治る術を探すことをお勧めします。

 ボクはおかげさまでどんどん良くなっています。昨日は走ってみました。歩いている人に軽く抜かれましたけどね(笑い)。

▽みずの・たけし 1965年、東京都生まれ。新聞の川柳講座に投句を重ね、1000句の入選を果たす。現在は川柳セミナー講師やラジオパーソナリティーのほか、東京新聞「暮らすめいと」川柳コーナーの選者も務める。著書に「仲畑流万能川柳文庫①水野タケシ三〇〇選」、共著に「これから始める俳句・川柳いちばんやさしい入門書」など。

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