末期がんからの生還者たち

胆管がん<3>治療の実績がある病院が「手術はできません」

西口洋平さん
西口洋平さん(提供写真)

 3年前の2015年2月、「胆管がん・ステージⅣ」の告知を受けた西口洋平さん(38歳=東京・足立区在住)は、「東京逓信病院」(東京・千代田区)で手術を受けた。

 術後は化学療法(抗がん剤=ジェムザール、シスプラチン)を3週間に2回の行程で受け、2カ月後の4月には早くも職場に復帰した。

 西口さんが勤務しているベンチャー企業は、02年の入社時は社員数が50人に過ぎなかった。しかし、現在は約2000人に急成長している。

 久しぶりにスーツを着て満員電車に揺られ、会社に顔を出したときは心なしか緊張した。

「入院するときは、業務を共有する一握りの社員にしか伝えませんでした。ですから、私ががん治療で長期休暇していたことなんて他の社員は知りません。廊下で顔見知りの社員とすれ違うときなど、『おうおう』『やあやあ』なんてぎこちない挨拶になってしまいました」

 ただ、西口さんは同僚に説明できない苦悩を抱えていた。12時間かかると予告されていた難度の手術が、わずか2時間で終わっていたことだ。開腹すると、がんは腹膜やリンパ腺にも転移しており、完治には外科的治療が適さなかったのだ。

 3カ月に1回、CT検査を受け、腫瘍の様子を観察していたが、東京逓信病院からは「当病院では西口さんのケースは手術を勧めないし、ベストな選択かもわかりません」と言われていた。

■初年度の負担金は60万~70万円

 諦めきれない西口さんはセカンドオピニオンを求め、病院から一切の検査資料を借りて「がん研究会有明病院」(東京・江東区)を訪ねた。期待したものの、回答はここでも「手術はできません」だった。

「名古屋大学医学部付属病院」にも連絡してみた。電話口で病状を訴えると、来院の要請どころかやはり「手術できない」と告げられた。

 西口さんにとっては、胆管がんの進行状況について担当医師からの「落ち着いていますよ」という言葉だけが救いである。

 現在は半年に1度入院し、胆管に挿入しているステントの掃除以外に、会社に通勤しながら抗がん剤治療を継続している。

 西口さんが支払った治療費は、手術をした初年度は60万~70万円(3割負担)。その後の抗がん剤治療は1回1万円で月額3万円。入院治療のときは1週間で10万円ほどかかる。がんとの共生――。この治療はいつまで続くのだろうか。

関連記事