役に立つオモシロ医学論文

子宮頸がんワクチンの安全性は 注目の調査結果が専門誌に

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ワクチンは、疾病の予防に対して大きな効果があることが数々の研究で示されています。

 しかし、一方でその副反応を懸念する声も存在します。近年では、子宮頚がん予防のためのワクチン(HPVワクチン)に関連する副反応が、メディアでも大きく取り上げられました。

 子宮頚がんはヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することによって引き起こされるがんで、その発症予防のためにHPVワクチンが開発されました。

 ところが、ワクチン接種後に持続的な痛みを感じる複合性局所疼痛(とうつう)症候群を発症した症例が報告されたのです。

 2013年、厚生労働省はHPVワクチン接種と、複合性局所疼痛症候群の因果関係は不明としながらも、その積極的な接種の推奨を中止し、それは現在も継続されています。そんな中、パピローマウイルス専門誌に、HPVワクチンと有害反応の関連を調査した論文が18年2月23日付で掲載されました。

 この研究は94年4月から10年4月までの間に出生し、15年8月現在において名古屋市に在住していた女性7万1177人を対象としたアンケート調査です。小学校6年生から、15年9月までに接種したワクチンの種類や、関節や体が痛む、ひどく頭が痛い、疲れやすいなど24の身体症状の有無を調査しています。

 回答のあった2万9846例を解析した結果、24症状、いずれにおいてもHPVワクチン接種と明確な関連性は示されませんでした。HPVワクチンは、HPV感染や子宮頚部の異形成発症(子宮頚がんの前病変)を予防することがすでに示されており、日本産科婦人科学会は、国が一刻も早くHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開することを強く求めています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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