患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

野菜は意識して多めに食べるが酒の席では気にしない

平山瑞穂氏
平山瑞穂氏(C)日刊ゲンダイ

 僕のような1型糖尿病患者では、食事療法は治療にほとんど関係がない。重要なのは、食べる量と注射するインスリンの量とのバランスである。 

 食べる量に対してインスリンが少な過ぎれば血糖値が跳ね上がってしまうが、多過ぎれば低血糖を起こしてしまう。低血糖を起こさないよう、むしろ「しっかり食べる」ことを医師に言い含められているほどだ。

 それでも僕は、「2型期」に一度は真剣に食事療法をマスターしている。その時に会得した感覚は、インスリンのみによる治療に切りかえてから14年が経過した今もなお、体に染み付いている。

 白飯やパンがこれだけの量で何キロカロリーくらいか。鶏のササミ肉ならどれだけ食べれば1食当たりの適正な量になるか。目分量でおおむねの見当はつく。物を食べる際には、過去に身に付けたその感覚が、ほとんど自動的に頭の中を駆け巡り始めるのだ。

 特に野菜については、常に多めに取るように意識しているし、ほとんど取れない時は罪悪感にすら駆られてしまう。野菜をいかに効率的に摂取するかは、食事療法の要のひとつだ。栄養バランスもさることながら、先に食物繊維を多めに取っておけば、それが食べたものを包み込んで緩やかな消化を促し、血糖値の急激な上昇を抑えることができるからだ。

 だから野菜を取れるかどうかは、1型患者である僕にとっても決して人ごとではない。注意を要するのは外食の際だ。飲食店のメニューはだいたいにおいて野菜が少なめなので、サイドメニューなどで極力補うように工夫している。

 もっとも、お酒を飲む時にまでいちいちそんなことを気にしていたら、何も楽しめなくなってしまう。酒杯を前にした途端、僕は心の内なる「その感覚」をいさぎよくオフにするのである。物事にはメリハリが必要だということだ。

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

関連記事