アメリカではドラッグ過剰摂取による死亡が、ついに年間7万人を超えました。
CDC(アメリカ疾病対策センター)の調べでは、2017年のドラッグ過剰摂取による死者は、前年より10%近く増加の7万2000人。エイズ、交通事故、そして銃による死亡者がピークに達した年の死者を全部足した数を上回ります。
最大の原因は本コラムでも何度も取り上げているオピオイド系麻薬で、過剰摂取死の3分の2を占めています。
手術後などに処方される強い鎮痛薬ですが、4人に1人が依存症になるといわれ、処方薬が切れると、同じ効果を持つヘロインや、もっと安く手に入るファンタニルなどの合成オピオイドへと移行しがち。あらゆる階層の、あらゆる年齢のアメリカ人が犠牲になっているのも、他のドラッグにはない特色です。
先月「アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリック・ヘルス(AmericanJournalofPublicHealth)」に発表された論文では、向こう10年間、オピオイド系麻薬で亡くなる人は推定51万。この論文を発表したスタンフォード大学の研究者らは「過剰摂取死を防ぐための対策が実態に追いついていない。対策を十分に取れば効果は出るはず」とコメント。
たとえば、解毒剤ナロキソン(Naloxone)です。ポップスターのデミ・ロバートがオピオイド系麻薬を過剰摂取した時、命を救ったことで知られるようになったもので、病院の救急救命室を中心に普及が進んでいます。
しかし、搬送後では間に合わないケースも多く、学校の保健室からエアラインの救急キットまで広い普及が叫ばれています。
この薬が手に入りやすくなれば、10年間に2万人の命が救えると論文では試算しています。
もちろんそれだけで十分ではなく、依存症を治療する薬による治療、強い鎮痛剤の処方を減らすことなど、あらゆる方策を実行するための法整備と予算確保が急務と、論文は結んでいます。
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