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【芝エビづくし】「始末」で体や血管の老化を防止する

芝エビの「新玉ネギとのかき揚げ」と「アメリケースソースと温泉卵のグラタン」
芝エビの「新玉ネギとのかき揚げ」と「アメリケースソースと温泉卵のグラタン」/(C)日刊ゲンダイ
ホールフード主義<2>

 料理には「始末」という言葉があります。京都や大阪など、昔から主に関西で使われていましたけど、食材を最後まできちんと使い切ること。魚なら皮も含めて頭から尻尾まで、野菜は丸ごと料理に使用する。工夫して食材を残らず使い切ることを「始末する」と言います。

 節約や無駄遣いを防ぐことが目的ではありません。野菜しかり、魚介類しかり、せっかく命あるものをいただくわけですから、感謝の気持ちを込めて最後までおいしくいただこうということです。

 野菜の皮は特に味や香りが強いですし、魚も頭やアラはおいしくて、なおかつ栄養が豊富です。福岡先生のおっしゃる「ホールフード主義」は、ある意味「始末の料理」でもあります。

 さて、今回の芝エビは身をかき揚げに、頭や殻は良いだしが取れるので、アメリケーヌソースにして温泉卵とグラタンにしてみました。アメリケーヌソースはフランス料理のソースの一種で、エビ独自の甘味やうま味が味わえるため、シーフードグラタンやシチューパスタに使ってもおいしくいただけます。

 芝エビには熱を加えると赤くなる色素成分のアスタキサンチンが含まれています。アスタキサンチンは体や血管の老化を防ぐ抗酸化作用や、動脈硬化を抑制する作用があります。「始末」によっておいしく、なおかつアンチエイジングを実践できれば理想的です。

《材料》
◎水 1カップ
◎卵液 2分の1個
◎薄力粉 大さじ4+適宜
◎かたくり粉 大さじ2
◎芝エビ(殻付き) 500グラム
◎新玉ネギ 中1個
◎ミツバ(ざく切り) 3分の1カップ
◎揚げ油 適宜
◎塩、レモン 適宜

《作り方》
(1)水と卵液を混ぜたものと、薄力粉とかたくり粉を混ぜたものを、別々に冷蔵庫で冷やす。
(2)芝エビの頭を外し、殻をむき、頭と殻は取り置く。身は背ワタを抜き、大きなものは2~3センチに切る。2~3センチに切った新玉ネギ、ミツバと合わせたら、茶こしを通した薄力粉を全体に薄くふりかけておく。
(3)揚げ油を170度に熱する。①をざっくり混ぜ合わせたものと、4分の1カップほどの②を合わせたら小さなおたまで油に静かに流し入れる。散った具材はすぐに箸で真ん中に集める。片面に火が通ったら裏返し、両面に火が通ったら、すくい網で油から取り出し、ペーパータオルにのせて油を切る。熱々のうちに塩とレモンでいただく。

■アメリケーヌソースと温泉卵のグラタン

 芝エビの頭と殻と白ワイン4分の1カップを小鍋でサッと煮たら、すり鉢であたるかプロセッサーにかける。こした汁は生クリーム、塩、白こしょうで味を調え、温泉卵と合わせてオーブン皿へ。ナチュラルチーズとパルミジャーノチーズを上にのせ、オーブンで香ばしい焦げ目がつくまで焼く。

(松田美智子)

芝エビは完全食品
芝エビは完全食品(C)日刊ゲンダイ

■小なりとも完全食品

 自然界を眺めてみると、ヘビでもカエルでも、捕らえた獲物はそのままパクリ。つまり、生物はちゃんとホールフード(丸ごと食品)を心がけている。食べることは、生きること。丸ごといただくことによって、生命とそこに含まれる全栄養素をすべて受け取るのである。我々もできればそれを見習いたい。

 硬いうろこや骨があるとそう簡単にいかないことも多いが、芝エビくらいならホールフードの教えを実践できる。芝エビは近海で捕れる小型のエビ。エビの子どもではなく、立派な大人。昔は芝浦沖で漁獲されたのでこの名がある。

 芝エビを丸ごと食べると良いことがいっぱい。解毒作用に重要なアミノ酸タウリン、抗酸化作用を持つビタミンE、骨の成長に必須のビタミンDとカルシウムを豊富に含む。エビの殻はキチンという物質で、ヒトには直接栄養素とはならないが食物繊維として働き、コレステロールや毒素の吸着作用がある。また独特のうま味を持つ甲殻類のミソは、脳みそではなく肝臓。ここにも鉄分がいっぱい。芝エビは小なりとはいえ完全食品なのである。

(福岡伸一)

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

▽松田美智子(まつだ・みちこ) 女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事」「調味料の効能と料理法」など。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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