エイズの原因となるウイルス「HIV」に感染したマウスのDNAから、ウイルスを除去する実験に初めて成功したと発表され、大きな反響を呼んでいます。エイズが完治できる可能性に一歩近づいたからです。
実験に成功したのは、テンプル大学とネブラスカ大学医学部の30人以上の研究グループで、雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表されました。
それによると、まずマウスにヒトの骨髄を注射、ヒトの免疫システムと同じようにウイルスに感染するT細胞を作り出し、次にレーザー・アートと呼ばれるゆっくりと長時間作用する抗レトロウイルス剤を使いウイルスの増殖を抑えます。そして、CRISPR(クリスパー)というゲノム編集技術を使ってウイルスをDNAから除去。その結果、23匹のマウスのうち9匹でウイルスの完全除去に成功したといいます。
同じ研究グループではすでに霊長類でも同様の実験を始めていて、向こう1年以内にはウイルスが除去できたかどうかがわかるとのこと。その結果が良ければ、米食品医薬品局の許可を得て、来年中にも遺伝子編集の臨床実験に入れるとしています。
かつては死の宣告だったエイズも、抗レトロウイルス剤を投与し続ければ、ウイルスの作用を抑えることができるようになりました。しかし、WHOによると、現在HIVに感染している3700万人のうち、抗レトロウイルス治療を受けている人は2200万人。2017年にエイズで亡くなった人の数は100万人近くに上っています。
特にアフリカ南部の地域では、10人に1人がHIVに感染。スワジランドやボツワナなどでは大人の感染者は5人に1人を超えているとみられ、深刻な状況が続いています。
一方、アメリカのHIV感染者は110万人、日本では感染者と患者数を合わせた数が2017年末時点で約2万9000人となっています。もしこの治療法が確立されれば、1980年代に発見されて以来、世界を震撼(しんかん)させてきたエイズが、地上から消える日に一歩近づくことになります。
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