猛暑に気を付けたい病気

【末梢動脈疾患】クーラーで体より足が冷たくなる人は危険

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 「クーラーを浴びたとき、上半身より先に足が冷たくなる」「足が重く歩くとだるさを感じる」「傷の色が黒い」などということはないだろうか? 心当たりがある人は「末梢動脈疾患」(PAD)を疑った方がいいかもしれない。

■心筋梗塞や脳卒中の前兆

 猛暑では心筋梗塞や脳卒中、手足を切断するリスクが高まる。東邦大学名誉教授で平成横浜病院総合健診センター長の東丸貴信医師に聞いた。

「PADは末梢動脈硬化により血管が狭くなり血流が減るため、下肢や上肢が虚血状態になる病気です。下肢の病気が主で、歩くと足の痛みやしびれが出て、止まると症状がなくなる『間欠性破行』が生じます。腕の動脈が詰まることはまれですが、手のしびれ、冷感や痛みが出ます。腸管動脈が詰まると腹痛が表れ、腎動脈では腎性高血圧や腎障害を起こします」

 喫煙習慣、糖尿病、高血圧症などの生活習慣病が原因とされ、日本では50万~100万人が罹患していると推測されている。70歳以上に限ると15%に上るとされ、糖尿病の高齢者は、半数以上がこの病気だといわれている。

「糖尿病患者では、血糖が上昇しているために血液の浸透圧が高くなり、周囲の細胞から水分を引き込みます。体内の水分量は足りていても脱水様の症状が引き起こされます。これに猛暑による脱水が加わると、血液はドロドロになり、血小板が活性化して血が固まり始めます(血栓)。これに赤血球などがくっつくと、血栓の成長により血管が詰まりやすくなる。猛暑での高温や日射のストレスにより、糖尿病が悪化する悪循環に陥りやすいのです」

■糖尿病なら足切断リスクが上がる

 とはいえ、手足などの細い血管が詰まるくらいで脳卒中や心筋梗塞に関係するのか? と不思議に思うかもしれない。しかし、PADは脳卒中や心筋梗塞の前兆であることは多くの疫学研究が示している。

 例えば、7万人を対象にした国際的な研究ではPAD患者の50%が冠動脈疾患、25%が脳血管疾患にかかっていた。

 PADの重症度は4つに分類される。Ⅰ度は無症状、Ⅱ度は歩くと痛みが出る、Ⅲ度は安静時でも痛い、Ⅳ度は潰瘍・壊死が起こる、だ。Ⅲ度以上では1年後の足の切断リスクは30%ともいわれている。

「下肢動脈疾患の診断は間欠性破行症状、足首上腕血圧比(ABI)や下肢動脈超音波検査で行います。ただし、下腿部のPADではABIが正常なことや症状が出ないこともある。動脈硬化リスクのある人は、循環器ドックなどでPADの有無を早期に診断してもらうことが必要です」

 早期診断できれば、PADは血管内治療や手術で元気を取り戻せる。ともあれ、猛暑の時期には、十分な水分補給、適切な室温管理や外での熱中症予防により、PADの悪化を防ぐよう努めることが重要だ。

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