病の克服は患者に聞け

脊柱管狭窄症<2>ゴッドハンドでも症状は改善しなかった

曽我陽三さん
曽我陽三さん(提供写真)

 昨年9月、都内の総合病院の「脊柱脊髄外科」で10時間に及ぶ「脊柱管狭窄症」の手術を受けた「一般社団法人・日本ビジュアル著作権協会」(東京・飯田橋)の曽我陽三理事長(70)。「もう思い出したくもない病気です」と言う。

 術後、約2カ月間入院。腹部にコルセットを着け、現在も1日、数千歩の散歩を欠かさない。リハビリの渦中にある。

 さかのぼること10年前、曽我さんは脊柱管狭窄症に伴う「腰痛」を体感した。当初は、軽い腰痛程度と思い込み、マッサージ店や整体治療院に通院している。

 近年、中高年の間で急増している「脊柱管狭窄症」の治療法は大きく2つ。手術と、もう1つは「保存療法」である。

 保存療法には薬物療法(痛みを抑える飲み薬、湿布や塗り薬など)と腰を安定させるコルセットの着用。それでも痛みが改善しないときは、「ブロック注射」などがある。

 根治治療は手術だが、曽我さんは、手術を受ける1年半前に治療を受けていた総合病院の担当医から「今、手術をすれば
だいたい2時間で、入院は1、2週間で退院できますよ」と説明を受けていた。しかし「この病気で手術とは、骨を切るなど痛いのではないか。もし手術に失敗したら身体障害者になるかも」と、不安を抱き、手術を決断するまでの10年間、もっぱら「保存療法」に頼り、痛みに耐えてきた。

 同病気の症状は腰周辺の痛みやしびれ、病態が進行すると歩行も困難になる。

 曽我さんはマッサージ店に通い、週に2、3回、温水プールにも行き腰をほぐした。

 指圧マッサージを受けた直後は、痛みが少し軽減する。だが、しばらくすると、不愉快な痛みがまた戻ってきた。

 寝ても覚めても痛い。少し長歩きすると、激痛が走り、立ち止まって深呼吸をした。

 友人から整体治療院を勧められ、テレビ番組で「ゴッドハンド」と紹介された治療院に電話をかけると、「4年先まで予約でいっぱい」と、断られた。泣く泣く受話器を置いた直後に今度は院から電話がかかってきた。

「たまたま来週の水曜日、午後1時なら空いています」

 何度か同院で“ゴッドハンド”の治療を受けた。だが症状は少しも改善しない。静岡県内に、「凄い整体師がいる」と聞き、新幹線で向かったこともある。

 診療室にはテレビに出演したときの大きなパネルが何枚も張ってある。

「『腰痛』は手術では治りませんよ」のアドバイスを受けて、何回か通院した。診療費は1回4000円。だが日々の痛みは少しも改善しなかった。 

 曽我さんはこうしてマッサージ店や整体治療院をおよそ10年間、交互に通院している間に、痛みやしびれの症状が、悪化の一途をたどることになる。

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