専門医が教える パンツの中の秘密

【睾丸損傷】“打撃”で激痛が走ると男性が飛び跳ねる理由

膝に孫を乗せるときは要注意…
膝に孫を乗せるときは要注意…

 女性には理解してもらえない痛みに、睾丸(精巣)の打撲があります。男性の急所は「目」と「金タマ」と言われますが、どちらも神経と直接つながっているため軽い衝撃で激痛を伴うのです。それだけ大事な器官といえるわけです。

 睾丸は大事な器官なのに体内でなく体表にぶら下がっています。もともと胎児のときには腎臓の近くにあるのですが、成長とともに陰嚢(いんのう)へ下降してくるのです。それは睾丸で作られる精子が熱に弱いから。シワシワの陰嚢にはラジエーターの役割があり、精子にとって最適な約33度に保たれています。

 そのような理由から、ボールが当たる、蹴られる、自転車のサドルで強打する……などの事故がよく起こります。男性なら誰も経験していると思いますが、睾丸を強打したときに「ぴょんぴょん跳ねる」行為をしませんか? 何のためにやるのでしょう。それは「睾丸脱出症」という外傷を防ぐためです。

 胎児のときに睾丸が陰嚢に下りてくるときには、太ももの付け根にあるソケイ管を通ってきます。通常、ソケイ管は閉じてしまいます。しかし、睾丸に強い圧力が加わると、ソケイ管など弱い組織を通って、睾丸が陰嚢の外に飛び出てしまうことがあるのです。それで睾丸を陰嚢内に下ろす処置として、ぴょんぴょん跳ねるのです。しかし、どれだけの効果があるのかは分かりません。

■孫を膝の上に乗せるのは危険

 軽い打撲であれば一時的に腫れる場合もありますが、冷やして安静にしていれば改善します。ただし、大きな血腫(血がたまる)があると睾丸内圧が高まるので、手術で除去する必要があります。

 最悪なケースが「睾丸破裂」です。睾丸は「白膜」と呼ばれる強靱な被膜に包まれていますが、その白膜が破裂してしまった状態です。睾丸の白膜は、少しずつ加えるのであれば60キロぐらいまでの圧力に耐えられるといわれますが、交通事故などで瞬時に強い圧力が加わると破裂しやすくなります。

 日常生活で特に注意してもらいたい場面は、おじいちゃんがお孫さんを膝に乗せているときです。小さい子供ははしゃぎますから、立ち上がってぴょんぴょん跳ねているうちにおじいちゃんの睾丸を踏み潰して破裂させてしまうケースがあるのです。

 破裂すると激痛だけでなく、悪心、嘔吐(おうと)やショック症状なども起こります。治療は、緊急手術で破裂した白膜を縫合します。睾丸損傷は、不意に起こるのでくれぐれも注意してください。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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