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ヘルシーな食材 ラム肉をおいしく食べやすくいただくコツ

ラムチョップのパン粉焼き(左)と柚子胡椒焼き
ラムチョップのパン粉焼き(左)と柚子胡椒焼き(C)日刊ゲンダイ
肉を食す(4)羊

 生後1年未満の子羊のラムは、栄養豊富でヘルシーな食材として知られています。

 牛肉や豚肉や鶏肉と比べても豊富な不飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを減らし、血液をサラサラにします。イワシやアジなどの青魚に含まれる成分がラムには多いのです。

 アミノ酸の一種のカルニチンにはダイエット効果が期待できるだけでなく、老化や記憶力低下を抑制する可能性も指摘されています。

 今回は、子羊のロース肉を骨付きの状態で切り離したラムチョップを使った2品、パン粉焼きと柚子胡椒焼きです。

 ともに脂の部分に下包丁を入れるのは焼き縮みを防ぐため。わずかなひと手間ですけど、するとしないとでは食感や後味も違ってきます。

 ラムは焼き加減も重要です。焼き過ぎると肉のうま味が飛んでしまいますから、切断面の焼き色が薄いピンクベージュになるように仕上げるのが理想です。

 中にはラム特有の臭みを毛嫌いする方もいらっしゃいますけど、以前と違って、最近はオーストラリアや北海道から質の良いものが手に入りやすくなりました。調理の際にニンニク、香草、柚子胡椒など香りの強いものを利用するのもひとつの方法で、意外にも相性が良いのが醤油です。柚子胡椒焼きで最初に醤油ベースの下味をつけるのもそのためです。

 栄養豊富でヘルシーなラムをぜひ、おいしく召し上がってください。

■ラムチョップのパン粉焼き

《材料》(2人分) 
◎ラムチョップ  6本
◎ニンニクすりおろし  小さじ2分の1
◎タイム  2茎
◎塩  小さじ2分の1
◎白胡椒  適宜
◎オリーブオイル  大さじ2+大さじ2
◎タイムの葉先(茎から葉をそぎ落とす)  小さじ1
◎パセリみじん切り  小さじ1
◎パルメザンチーズ  大さじ2
◎生パン粉  大さじ3
◎レモン  適宜

《作り方》 
 ラムチョップの脂の部分に数カ所、下包丁を入れ、ニンニク、タイム、塩、白胡椒、オリーブオイル(大さじ2)を合わせたものと15分、マリネする。ラムチョップの肉が左、骨が右になるよう置き、タイムの葉先、パセリ、パルメザンチーズ、オリーブオイル(大さじ2)、生パン粉を合わせたものを少しずつ肉の上にのせるように盛る(写真)。250度に予熱したオーブン、または高温に熱した魚焼きグリルの上に置き、オーブンで5~7分、魚焼きグリルで5分焼く。好みでレモンを搾っていただく。

■ラムチョップの柚子胡椒焼き


 ラムチョップ6本に下包丁を入れ、すりおろしたニンニク小さじ2分の1、醤油大さじ3、酒大さじ2に15分漬ける。肉の表面に柚子胡椒小さじ1と2分の1、オリーブオイル大さじ2をよく混ぜたものをのせ、オーブン、または魚焼きグリルで焼く。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

ラムチョップの肉が左、骨が右になるように置き、少しずつ肉の上にのせるように盛る
ラムチョップの肉が左、骨が右になるように置き、少しずつ肉の上にのせるように盛る(C)日刊ゲンダイ
カルニチンというアミノ酸にダイエット成分

 肉の中でも特に羊肉が好き、という人は多い。羊肉独特の香味がいいからだろう。私も大好きである。

 牛、豚、鳥、羊と比べると、肉の主たる成分の筋肉タンパク質にはほとんど差がないが、食べると味に大きな違いがある。これはそれぞれの肉に含まれる脂肪の差による。そして脂肪はエサの影響を大きく受ける。豊かな牧草を食べて育った羊の肉は香ばしい香りがする。特に、分岐鎖脂肪酸と呼ばれる特別な油脂成分が香味成分の正体だ。この脂肪酸、ちょっと構造が違うだけで、羊肉のよい香りになったり、はたまた、靴下のいやな臭いになったりする。

 ところで、同じ羊肉でも、ラムとマトンの違い、わかりますか。ラムは生後1年未満の若い羊、マトンはそれ以上の羊。当然ながら、ラムの方が軟らかく、くせがない。マトンはそれなりにしっかりとした味になる。どちらを選ぶかは好みの問題だが、幼い羊をどんどん食用にしてしまっているという人間の強欲さは覚えておいた方がいいかもしれない。

 先に、タンパク質にほとんど差はない、と書いたが、羊の肉にはちょっとした特質がある。それはカルニチンというアミノ酸が多いこと。カルニチンは、細胞の中でミトコンドリアが脂肪を燃やすとき手助けする作用がある。なので、ダイエット成分といえる。ただし、ラムを食べすぎてしまえば元も子もない。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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