中高年の正しい眠り方

ベッドでは「眠る」以外の行動をしてはいけない

写真はイメージ
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 なかなか寝つけない、しっかり熟睡できない……といった悩みを抱えて睡眠外来を訪れた方には、まず「ベッドでは『眠る』以外の行動をしない」ことを実行してもらいます。これが、睡眠の質を高めるための最初の一歩になるのです。

 ベッドに入ってから読書をしたり、音楽を聴いたり、スマホでSNSのチェックをしたり、ゲームをして、眠くなってきたらそのまま就寝……といった行動をしている人がたくさんいます。しかし、この習慣が睡眠の質を下げてしまいます。

 われわれの脳には、次の行動を予測して準備をする「フィードフォワード」という仕組みがあります。たとえばベッドで読書をすると、脳は「ベッドで文字を読んだ」という記憶をもとにして、次にベッドに入ろうとするときになるべく文字が読みやすくなる態勢を整え、準備して臨みます。スマホをいじったり、音楽を聴いたときも同じです。

 脳には「場所」と「行為」をセットで記憶する仕組みもあるので、ベッドで眠りに関係ない行動を続けていると、ベッドに入ってもなかなか寝つけなくなってしまいます。脳が「ベッド=作業する場所」と記憶してしまうからです。

■何か作業をするなら「場所」を変えること

 また、脳を目覚めさせる役割がある「アセチルコリン」という神経伝達物質も睡眠に悪影響を与えます。アセチルコリンは、眠っている間に周囲の刺激に反応して、安全を確保できるよう監視しています。ベッドの中で眠りに関係ない行為をする習慣があると、睡眠中にアセチルコリンの働きが活発になり、目覚めやすくなってしまうケースもあるのです。

 つまり、寝つきを良くして睡眠の質を高めるためには、「ベッド=眠る場所」であること、「ベッド=安全な場所」であることを脳に覚え込ませる必要があります。

 ただ、習慣というのはそう簡単には変えられないものです。長い間ベッドの中で読書をしてきた人は、眠る前の読書時間がないとかえって落ち着かなくなって寝つきにくくなる場合もあります。ベッドでスマホをいじらないと眠くならない……という人も同じです。

 そこで、「行為」は変えずに「場所」を変えてみましょう。ベッドのそばにイスとテーブルを設置するなどして、そこを読書やスマホを使うスペースにするのです。就寝前はそのエリアで本を読んだりスマホを操作するようにして、リラックスして眠くなってきたら、本やスマホを置いてベッドに入ります。就寝前の習慣になっている作業を行う場所を変えて、「ベッドに入ったら眠りがスタートする」「ベッド=眠る場所」ということを脳に教え込むのです。

 ベッドであれこれ考え事をしてしまってなかなか眠れないという人も、脳には「ベッド=考え事をする場所」という記憶がつくられています。同じようにベッドのそばにつくったスペースで考え事をして、眠くなったらベッドに入るようにしてください。これが習慣になれば、寝つきが良くなり睡眠の質も向上します。

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