いびきをかかない体をつくる生活習慣…それは眠る前が大事

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「うるさくて迷惑だけど、しょうがない」と思われがちないびき。しかし、放置しておくと睡眠時無呼吸症候群(SAS)につながり、高血圧症などの進行にともなう狭心症や心筋梗塞などの循環器系疾患、糖尿病などの代謝系疾患を招き、最悪の場合、突然死のリスクを高めることもある、非常に怖いものだ。

 日本睡眠学会専門医で「RESM新横浜」(神奈川県横浜市)の白濱龍太郎院長は言う。

「それだけでなく、睡眠時無呼吸症候群がうつ病の引き金になるケースがあることや、AGA(男性型脱毛症)を進行させる可能性、ED(勃起不全)になる確率を上げるということもわかってきました。また、同じ部屋で寝ている人の血圧も上げてしまうというデータもあります。自分だけでなく周りの人のためにも、しっかり向き合って治す必要がある病気だと認識していただきたいと思います」

 ここでは、白濱院長の著書「睡眠専門医が考案した いびきを自分で治す方法」から、いびきをかかない体をつくる生活習慣について紹介する。

時間がないなら首の後ろにちょっと熱めのシャワーを(C)tagstock1/iStock
寝る1時間半から2時間ほど前の入浴が理想的

 いびきをかかないようにするためには、眠りにつく前の行動が重要だ。睡眠の質の良し悪しといびきの発生率は関係しているとのデータもあり、睡眠の質を上げることが、いびきの解消につながるという。

 重要なポイントとなるのは「入浴」だ。睡眠には、体の内側の温度「深部体温」が大きな影響を与える。体の表面の温度である皮膚温に対し、深部体温とは脳や内臓など体の内側の体温のことで、1日を通して決まったリズムで変動している。

 深部体温は、朝、目覚める頃から上昇し始め、日中は高めの状態のまま推移し、夜になるにつれて低くなっていく。具体的な時間で考えてみると、たとえば朝8時に起床した場合、その約11時間後の19時頃に最も高くなり、そこから少しずつ下がっていく。私たちの体は「深部体温の低下によって眠くなる」という仕組みになっているため、良い睡眠がとれていないという人は、深部体温のリズムが乱れてしまっていることが多いのだという。

 深部体温を調整する上で、入浴は非常に有効だ。入浴することによって意図的に深部体温のピークをつくり、熱が抜けていく過程で眠気を作り出せるからだ。理想的なのは、寝る1時間半から2時間ほど前に入浴すること。それくらいの時間帯に深部体温をピークにしておけば、布団に入るタイミングでちょうどいい眠気がやってくる。

 湯船に一定時間浸かることが望ましいが、夏場や時間がないときなど湯船に浸かれない場合は、首の後ろにちょっと熱めのシャワーをあてる方法がおすすめだという。首の後ろには、多くの血管が集中しているため、ここにお湯を集中的に当てると、湯船に浸からなくても血行を良くして、効率的に深部体温を上げることができる。

就寝前は「歯磨き」を避けるべき(C)nortonrsx/iStock
「寝る直前」の歯磨きは避けるべき

 質の良い睡眠をとるために、就寝前は避けた方がよいこともある。その1つは寝る直前の「歯磨き」だ。過度に歯茎を刺激すると、睡眠ホルモンのメラトニンの働きが弱まる可能性があるため、睡眠の質を下げてしまう。夕食を終えたら早めに歯磨きを済ませておくことを習慣にしたい。

 また、近年は禁煙の風潮が加速度的に強まりつつあるが、禁煙はいびきをかかない体をつくるためにも重要だ。喫煙者は非喫煙者と比べていびきをかきやすいという研究結果や、喫煙者本人だけでなく周りにいる人のいびきをかく確率を上げてしまうという数値も出ている。自分のためにも周りのためにも禁煙が推奨される。

 いびきは、われわれの体や心にさまざまな悪影響を与える。健康な心身を保ちたければ、「たかが、いびき」と軽く考えず、真剣に向き合って改善に取り組むことが必要だ。いびきで悩んでいる人、家族やパートナーのいびきに悩まされている人、あるいは身近な人がいびきで悩んでいるという人は、いびきをかかない体をつくるための生活習慣の見直しから始めてみてはいかがだろうか。

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