80代の10人に1人は心房細動 4割が死の危険に気付いていない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 心房細動は患者数推定100万人超、80代では10人に1人が該当するといわれる病気だ。この病気が厄介なのは、気付いていない人が多い点だ。京都府立医科大学不整脈先進医療学講座講師の妹尾恵太郎医師に聞いた。

 心房細動は心拍や拍動のリズムが一定でなくなる不整脈の一種。心房がけいれんしたように細かく震え、血液をうまく全身に送り出せなくなる。高齢になるほど患者数が増え、男性に多い。

「息切れ、動悸、胸苦しさ、呼吸困難などの症状がありますが、心房細動の患者さんの4割は自覚症状がありません」

 高齢者の場合、症状が曖昧で「なんとなくだるい」「年のせい」と思いがちだ。

「最初は非常に短い時間だけ症状が出て、徐々に頻度が増え慢性化していくのですが、少しずつなので、軽い息切れや動悸の症状を見過ごしているうちに徐々に体が慣れてしまい症状を感じなくなります。しかし心房細動は進行し、リモデリング(構造的変化)となって、元に戻らない状態になる。その前に、発作が出ている段階で治療介入していくべきです」

 なぜ心房細動が早い段階で適切な治療が必要なのか? それは、心房細動がさまざまな重篤な病気のリスクを上げるからだという。

■すべての認知症の危険因子

 まず、心不全だ。心不全は心臓の機能がうまく働かず、全身の血液の循環が滞る状態で、「入院→退院→再発→入院……」を繰り返す。そのうち治療法がなくなり、死に至る。

「心房細動の患者さんのうち、20~30%が心不全を合併します」

 心房細動が心不全を引き起こし、心不全が心房細動をより悪くする悪循環に陥る。

 次に、脳梗塞だ。

「心房の中で血液がよどみ、血栓ができやすくなり、それが血流に乗って脳に飛び、血管に詰まると脳梗塞が起こります。大きい血栓なので命に関わる大きな脳梗塞になりやすく、一命を取り留めても半身マヒや寝たきりなど重い後遺症が出る可能性が高いのです」

 脳梗塞の20~30%は心房細動によるもので、心房細動の人は、そうでない人より5倍、脳梗塞になりやすいといわれている。抗凝固薬でリスクを下げられるが、薬は毎日飲まなければならない。

 さらに、認知症だ。心房細動は認知症に1・4倍なりやすく、すべての認知症の危険因子と報告されている。

 心不全、脳梗塞は前述の通り、命に関わる病気。それもあり、心不全は死亡リスクの高さも指摘されている。その率、1・5~3・5倍だ。

 では、心房細動かどうかをチェックするにはどうすればいいのか? 自覚症状がない人が4割なので「不調がない」というのは当てにならない。自宅で簡単に心電図を測れる家庭用心電計があるので、これで測定した結果を病院に持っていき、チェックしてもらう手もある。これが面倒なら、第1段階として、脈拍を測定する。人さし指、中指、薬指の3本の指の腹を手首に当てると測定しやすい。15秒間ほど指の腹を当てて、間隔が不規則だと思ったら1~2分ほど続ける。脈が不規則、脈が弱い場合は、不整脈をよく診ている医療機関を受診すべき。

「心房細動は心不全、高血圧、狭心症、心筋梗塞、弁膜症、加齢、肥満、糖尿病、飲酒や喫煙の習慣、睡眠時無呼吸症候群、ストレス、甲状腺機能亢進症の人がなりやすい。リスク要因がある人は、年齢が若くても要注意です」

 軽い息切れや動悸など症状があるのに、注意を払っていない人もいる。心房細動が疑われる症状が少しでもあれば、専門医に相談した方がいい。自分だけでなく、老親の体調も確認しよう。

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