真冬の睡眠 寝室温度「18度以上」をキープしないと健康トラブルにつながる

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 相次ぐ寒波の到来により全国的に厳しい寒さが続いている。1月5日の「寒の入り」から2月4日の「立春」までは一年で最も寒い時季といわれ、ぐっすり眠れないという人も多いだろう。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に真冬の睡眠で気を付けるべきポイントを聞いた。

 冷え込む真冬に熟睡するためには、「18度以上」の室温を維持することが重要だという。

「日本睡眠科学研究所の研究によると、最も熟睡できる理想的な布団の内部の温度は『33度±1度』であることがわかっています。人間の体には、表面体温の他に、内臓を含めた体の中心部の体温である『深部体温』があり、深部体温が下がれば下がるほど眠くなって睡眠も深くなります。布団に入って体の表面が温かくなると深部体温も上がるため、今度は体が汗をかいて放熱し、深部体温を下げようとする仕組みが働きます。この働きによって布団内が温かくなり、33度前後の温度が維持されるのです。しかし、布団の外=室温が18度以下になると、布団内の温度も下がってしまって、理想的な温度を維持できなくなります。すると体も冷えて睡眠の質が下がり、さまざまな健康トラブルの原因になるのです」

 国土交通省の調査によると、冬の居間室温が18度未満の住宅では、LDL(悪玉)コレステロール値が1.6倍高くなり、心電図の異常所見も1.9倍増えることがわかっている。また、英国の研究では、12度以下になると血圧上昇や心血管疾患のリスクが高まるとされている。WHO(世界保健機関)も冬の最低室内温度は「18度以上」を強く勧告している。

「冬に室温が低いことで布団内の温度が下がりすぎると、体は深部体温を上げようとして活動時や緊張状態で活発になる交感神経が優位になり、睡眠の質が下がってしまいます。さらに交感神経が優位になっている時間が長くなれば、神経伝達物質のアドレナリンやストレスホルモンのコルチゾールが多量に分泌されます。すると、血管、心臓、脳に大きな負担がかかり、高血圧、心筋梗塞、脳卒中といった病気の発症リスクが上がってしまうのです。内分泌系や免疫系にも支障を来し、糖尿病やうつ病などさまざまな病気が起こりやすくなります」

 また、冬の室温が低い環境では布団内の温度変化も大きくなり、血管の拡張と収縮が繰り返されることで動脈硬化が進行しやすくなる。すると、脳の老化も進んでいく。「先ほどの国土交通省の調査に携わっている慶応大の研究では、冬の室温が18度未満の寒い住宅から5度上げて暖かい環境にするだけで、脳の神経線維の質などで評価される脳年齢を10歳若く保てることがわかっています。室温が低い環境で、布団内の温度も低い状態のまま長期間にわたって就寝することを続けていると、脳の機能にも悪影響があるのです」

■「換気」も重要

 同調査では、対象となった2094軒の冬の寝室の就寝中平均室温は12.6度とかなり低い数字だった。冷え込む真冬に睡眠の質を高めてさまざまな健康トラブルを防ぐには、まずはエアコンをつけたまま就寝して「室温18度以上」をキープするようにしたい。

「布団内の温度を維持するため電気毛布などの温熱寝具で温めるのはおすすめできません。深部体温は、寝る前、就寝中、起床時で1度くらい変動します。しかし、温熱寝具は体全体を機械的にずっと温め続けるので、いつまでも深部体温が下がらずに睡眠の質が下がってしまうのです。ですから、室温を18度以上に保った状態にして、あくまで自身の体温で布団内の温度を維持することが大切です」

 ただし、室温18度以上を保つうえで注意すべきなのが「換気」だという。室温をキープするため、窓やドアを閉め切って寒い外気を取り込まずにいると、呼気によって室内の二酸化炭素(CO2)の濃度が高くなる危険があるという。

「体内のCO2濃度が高くなると血液が酸性に傾き、呼吸をつかさどる自律神経が正常に機能することができなくなります。その結果、頭痛や倦怠感といった症状が表れます。大気中のCO2濃度は0.03%なのに対し、呼気には4.5%のCO2が含まれています。マンションなどの気密性が高い住居で窓やドアを閉め切ったまま夫婦や家族と一緒に就寝すると、想像以上にCO2濃度が高くなり、健康トラブルにつながるリスクがあります。CO2は室内の低い場所にたまっていきますから、床に近いベッドや布団の上はなおさら注意が必要です」

 寒い冬は、寝室のエアコンをつけっぱなしにして室温18度以上をキープしながら、換気のため廊下側のドアは開けたまま眠りに就くことを心がけたい。

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