ニューヨークからお届けします。

粉ミルクの次はタンポン危機…米国での深刻な品不足が女性の健康を脅かす

インフレが続く中、マンハッタンのスーパーマーケットで買い物をする人たち
インフレが続く中、マンハッタンのスーパーマーケットで買い物をする人たち(C)ロイター

 赤ちゃんの粉ミルクの深刻な品不足についてお伝えしたばかりですが、続いて今度は女性の必需品タンポンが不足して問題になっています。なぜ女性に必要なものばかりが足りなくなるーー? アメリカの女性たちは悲鳴をあげています。

 パンデミック後に急増した需要に供給が追いつかず、原料調達などの物流が滞っているのは確かに間違いありません。さらにウクライナでの戦争に伴うロシアへの経済性制裁で世界的に原油が不足して価格が高騰し、あらゆるものが値上がりしています。アメリカの5月のインフレ率は1年前に比べて9%上昇という異常事態となっています。

 高いだけでなく多くの製品の供給が滞り、スーパーやドラッグストアに行ってもほしい商品がないことがしばしばです。

 すっかり空になった粉ミルクの棚に続いて、タンポンの棚もガラガラになっています。しかも需給のバランスが狂いタンポンは10%も値上がりし、代替商品のナプキンも上がっています。 

 日本ではタンポンを使用する人は2割程度ですが、アメリカでは4割を超えているので、困っている人がそれだけ多いことになります。

 ではなぜタンポンが不足しているのでしょうか? 最大手のプロクター&ギャンブル社とキンバリー・クラーク社は共に、パンデミックによって起こった労働者不足。そしてコットンやレーヨンなどの原料の需要が激増し、不足していることで供給が追いつかなくなっていると説明しています。

 しかしそれだけではないようです。今回の品不足の背景見ると、粉ミルクとタンポンにはいくつかの共通点があります。まず、どちらも少数の巨大企業が独占的に製造販売していること、そして今年初めに大規模なリコールがあったことです。

 また粉ミルクは出生率の低下で生産の伸びが頭打ちで、タンポンの使用者もジリジリと減り続けています。利益の増大が見込めない製品の工場がきちんと管理されていたのかという疑問を呈する人もいます。

 実際に、粉ミルクのリコールがあったアボット社は、工場の細菌汚染が発見された時期に、製造機器の買い替えにお金を注ぎ込む代わりに、発行済の自社株式を買い戻すバイバックにより、株主の懐を肥やしたことが、内部告発により明らかになっています。

 こうした大企業のモラルの欠如が、品不足やインフレをさらに悪化させているのではないか。アメリカ人の疑念は膨らむばかりです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事