健康長寿に役立つ高齢薬膳

【トマト】「清熱消暑」の効能で体の熱を冷まし水分を補う

トマトとゴーヤーの梅かつおサラダ
トマトとゴーヤーの梅かつおサラダ(提供写真)

 早い梅雨明け、そしていきなりうだるような猛暑……シニアにとっては、熱中症に注意すべきシーズンの到来です。

 熱中症は体温調節機能がうまく働かずに、体内に熱がこもることで引き起こされます。シニアが熱中症になりやすい原因として、まず挙げられるのは体温調節機能の衰えです。脳が暑いと判断すれば、体は体内を適切な温度にするために、皮膚の血管を拡張したり、汗の量を増やして体内の熱を外に逃がすように調節します。ところが、年を重ねるにつれて、暑さに対する感覚が鈍くなり、体温が上昇していても調節機能が働かず、気づいたときには重症化していることが多いのです。

 また、脱水も熱中症を引き起こす要因です。加齢によって体内の水分量は若い頃より低下しています。そのため、熱によるわずかな水分の減少でも脱水状態に。さらに暑さと同様に「のどが渇いた」という感覚も鈍くなっているために、気づかないうちに水分不足の状態が続いて熱中症を引き起こしてしまうのです。

 シニアはこうした理由から、室内にいたとしても熱中症になるリスク大。普段から体をいたわる夏の食養生を心掛けることが重要です。

 薬膳では、季節に合わせた食養生が重視されています。夏は体の熱を冷ます働きがある「寒涼性」の食材を取り入れることが大切。暑さによって体に必要な水分を失わないためにも、食べて「体内クーラー化」を図りましょう。

 また、汗をかいて失った「水」を補うことも必要です。中医学では水そのものだけではなく、体液を生み出す食材を取り入れて、体に潤いをとどめることが重要であると考えます。水分の過剰摂取は胃液が薄まり食欲が落ちて夏バテの原因になりやすいので、食べ物で賢く補いましょう。

 おすすめはトマト。「清熱消暑」という効能があり、体の熱を冷ます高い「暑気あたり」改善効果があるのです。さらに、体に必要な水分をたっぷり与えて潤わせる働きも備えています。まさに「熱中症対策の神食材」! 食欲不振にもよく、夏バテ改善のためにもぜひ取り入れたい食材です。また、高血圧の改善にも優れた働きがあります。血圧が高いときは毎日、朝食にトマトを食べるとよいでしょう。

 トマトの体の熱を下げ、暑気あたりを改善する効果を高めるには、同じく寒涼性を代表する食材であるゴーヤーとの組み合わせがおすすめです。

トマト高齢薬膳レシピ

トマトとゴーヤーの梅かつおサラダ

 体をクールダウンするトマトとゴーヤーを組み合わせたサラダ。夏バテ対策によい梅干しもドレッシングに加え、蒸し暑い日にもサッパリいただけます。ほんのり甘いドレッシングとかつおぶしの風味でゴーヤーが苦手な人にもおすすめ。

【材料】2人分
●ゴーヤー  2分の1本
●トマト  1個
●梅干し 1個
●かつおぶし  2グラム
●A(ぽん酢・オリーブオイル=各大さじ1、みりん=小さじ2、塩=少々)

【作り方】
 縦半分に切り、種とワタを取って薄切りにしたゴーヤーを塩でもみ、水で洗い、ひと口大に切ったトマトと合わせる。Aと種を取って包丁で叩いた梅干しを混ぜ合わせたドレッシングであえて器に盛り、かつおぶしを振る。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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