痛みのない暮らしを取り戻す

星状神経節ブロックを繰り返し行うと目的の病気のほかにも不調が改善

冷え性が良くなった人も
冷え性が良くなった人も

 星状神経節ブロック療法が、脳の視床下部という部分の血流を改善し、機能を高めるという話を繰り返ししていますが、それだけ脳の視床下部が私たちの体に大切だと私は考えています。視床下部には、自律神経、免疫、ホルモンの中枢があることはわかっていますが、その機能が高まることで全身のさまざまな病気に効果を発揮するからです。

 星状神経節ブロック療法をより安全な形の治療法に再構築した若杉文吉先生は、田中角栄氏が首相時代に、顔面神経麻痺の治療としてこの療法を行いました。当時、この未知なる療法を受け入れた角栄氏の度胸にも驚きますが、裏を返せばそれほど症状がつらかったのでしょう。この療法は効果を表し、角栄氏の顔面神経痛は治癒され、それ以上にそれまで抱えていたさまざまな体調不良も改善されたそうです。

 私の患者さんにも、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、片頭痛、高血圧、生理痛、更年期障害、肩関節周囲炎、花粉症、網膜色素変性症、脱毛症、三叉神経痛、突発性難聴などに高い治療効果をあげています。

 全身症状をもつ卵巣機能不全の方や神経性食思異常症(拒食症)の方にも効果が表れています。

 星状神経節ブロック療法の特徴のひとつは、繰り返して行っていると治療目的の病気や症状だけでなく、それに伴うさまざまな体の不調が改善されることです。治療を進める中で、「最近調子がいい」とだんだん表情が明るくなっていく患者さんは少なくありません。

 実際、冷え性、あかぎれ、水虫、頻尿、食欲不振、不眠症といった症状が改善されていくことがあります。これらの症状もストレスなどによる交感神経の過緊張によって起こるものです。

 この療法はおおもとの原因である交感神経の過緊張を緩和し、全身の血流を良くし、ホルモンの乱れや免疫のバランスを整えるのです。

 また、多くの症例数をこなしている医師が行う上では副作用もほとんどなく、老若男女を問わず行えます。

 ただし、時々まぶたがたれる、目の充血、声がかすれる、ものがのみ込みづらい、腕がしびれるといった症状がみられることがあります。これらは一時的なもので、2~3時間で必ず元に戻りますから心配はいりません。本気で難しい病気を乗り越えたい人にはぜひ選択肢に加えていただきたい療法のひとつです。

西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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