健康長寿に役立つ高齢薬膳

【ブドウ】「気」と「血」を速やかに補う“低血圧改善フルーツ”

ドライフルーツと黒豆の赤ワイン煮(提供写真)
ドライフルーツと黒豆の赤ワイン煮(提供写真)

 血圧の不調というと、高血圧のイメージが強いですが、低血圧にも注意したいものです。低血圧は、立ちくらみやめまい、朝なかなか起きられずに午前中は具合がよくない、疲れやすくてやる気がでない、食欲がない……など日常生活に支障を来します。快適なシニアライフのためにも、改善を図りましょう。

 加齢によって、血液の循環や自律神経の機能が低下すると、低血圧を引き起こしやすくなります。糖尿病や動脈硬化などの病気、出血性疾患や脱水によって血液と体液が失われていることが原因になる場合もあります。

 また、食後、胃や腸に血液が集まり、脳への血流が悪くなることで起きる「食事性低血圧」もシニアに多く見られます。

 中医学において低血圧は、「気血両虚(きけつりょうきょ)」と呼ばれる状態であると考えます。読んで字のごとく「気も血も足りない」ということ。血圧を上げるための「気も血もない」状態なのです。

「気」は全身の至るところを流れるエネルギーで、生命活動を維持し体全体を動かすための根本的な力です。そして「血」は、中医学において西洋医学の血液としての要素だけではなく、全身に流れて体のすみずみに栄養を与える液体と考えます。五臓六腑(ろっぷ)や筋肉を養い、生理機能を正常に保ち、目、皮膚、髪を滋養する役割があるのです。

 パワーの源である気と、体の栄養分である血が足りていないため、もともと体力がない人が多く見られます。気が不足している人は、そもそも消化機能が弱い場合が多く、栄養を十分吸収することができないため、血を生み出すこともできなくなるという悪循環に陥りがちなのです。

 対策としては、まず気と血を補う食材を積極的に取り入れることが大切です。おすすめはブドウ。気を速やかに補って滋養強壮によく、さらに血を補う優れた働きも備えています。まさに「低血圧改善サプリ」のような存在です。

 また、老化をつかさどる臓器の「腎」を強化し、加齢によるトラブルにも威力を発揮。さらに、「強筋骨」という効能もあり、筋肉と骨を強化するパワーもあります。シニアにはぜひ、積極的に取り入れてもらいたいフルーツといえるでしょう。ほかに、むくみや疲れ目の改善にも役立ちます。

 ブドウが旬の時季以外は、レーズンでも構いません。レーズンというとおやつのイメージが強いかもしれませんが、料理に使うのもおすすめです。サラダにトッピングしたり、煮物に入れるとほんのりした甘みがついておいしく仕上がります。忙しいときは、グレープジュースを。お酒をたしなむ方は赤ワインもよいでしょう。ブドウの低血圧を改善する効果を高めるためには、同様に気と血を補う黒豆、血を補う働きに優れたクコの実、プルーンと組み合わせるのがおすすめです。

■ブドウ高齢薬膳レシピ


ドライフルーツと黒豆の赤ワイン煮

 低血圧改善によいブドウと黒豆、血を補うドライフルーツをまとめて煮込んだレシピ。アンチエイジング、貧血改善にもよい薬膳コンポートです。ヨーグルトに入れてもおいしくいただけます。

【材料】2人分

●レーズン  大さじ2
●蒸し黒豆(水煮でも可)  60グラム
●プルーン  10個
●クコの実  大さじ2
●紅茶  2分の1カップ
●赤ワイン2分の1 カップ
●はちみつ  大さじ3
●シナモン(粉末)  少々

【作り方】

 鍋にすべての材料を入れて加熱する。煮立ったら火を弱めて5分煮る。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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