痛みのない暮らしを取り戻す

血便と下痢、偏頭痛をなんとかしたいと来院した男性は…

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 40代半ばで潰瘍性大腸炎を発症した典之さん(仮名・55歳)は、真面目で誠実なタイプの方です。4年前、初めて私の元に来られた時、これまで受けていた治療では本人が期待していたほど改善が見られず、方向性を変えたいと訴えられました。持病の片頭痛も、なんとかしたいと言います。

 話を伺うと、効果の高い、最新の薬を「1年で」ということですすめられ使い始めたそうですが、1年を過ぎた後も「思っているほど効果が表れていませんね」と言われ、さらに使用を延長されたとのこと。効果があまり表れていないなら別の治療法はないだろうか、と思ったそうです。

 いろいろ調べる中で、同じ潰瘍性大腸炎を克服し、痛みの治療や統合医療も行っている私を探して来院されたのです。

 私は典之さんに星状神経節ブロックのメカニズムを説明し、視床下部の機能改善と、炎症性サイトカインをコントロールする可能性を理解してもらった上で治療を始めました。

 すでにこの連載で繰り返し説明しているように、星状神経節ブロックは副交感神経のスイッチをオンにして血流を促進し、それによって痛みが緩和したり、免疫機能が向上し、体調の改善が期待できます。

 初回の星状神経節ブロックの治療後から、「血便や下痢の症状が軽くなったと感じた」と典之さんは報告してくださり、引き続き、月に2~3回の星状神経節ブロックをしつつ、漢方薬、機能性食品も取ってもらい、自律訓練法、呼吸法、気功なども取り入れて通院してもらいました。

 現在、薬を飲まず、病気を発症する前と同じような元気さを取り戻している典之さん。

 今年の5月に行った腸管内の炎症反応をチェックできるカルプロテクチン(便検査)のデータも、貧血データが正常値でした。片頭痛も改善しました。

「当時は先が見えなかった」と振り返る典之さん。仕事を存分にこなせるのが楽しくて仕方ないと話されていました。

西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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