痛みのない暮らしを取り戻す

「痛み」を取り除くことが自己治癒能力のサポートになる

写真はイメージ
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 隆久さん(仮名・71歳)は、7年前の2015年1月に前立腺肥大がんの診断を受けたということで、翌月2月に私の元に来られました。その数年前から前立腺肥大だと診断されており、定期的に検診を受けていたそうです。大学病院でPSAという腫瘍マーカーの100以上の上昇がわかり、病理診断で前立腺がんの診断に至ったのでした。

 前立腺がんの主な治療法は、監視療法、手術、放射線治療、ホルモン療法、抗がん剤治療があります。監視療法とは、経過観察を行いながら過剰な治療を防ぐ方法で、定期的な検査で症状悪化の兆しが見られたら、治療の開始を検討します。

 隆久さんはご夫婦で話し合い、監視療法を選択されました。一方、長年にわたりひどい片頭痛や肩凝りがあったため、以前から私の著書を読んでくれていたこともあり、訪ねてきてくれたのです。

 まずは星状神経節ブロックを受けていただくことにしました。珍しいことに、ご夫婦そろってすでに星状神経節ブロックのことをよく理解されていて、私の方が驚いたほどでした。

 PSAの値は、2016年は年の初めから少し過食やアルコール摂取が増えたため、血尿が出て上昇傾向に。ホルモン療法、糖質制限、運動療法、機能性食品の提案を加えると、PSA値は下がっていき、低値で安定。0.003くらいのまま経過観察を続けています。

 これまで私の元にはさまざまな難病や治療が難しいとされる病気の人が来院されました。しかし、希望を見いだせないように思えるときでも何らかの道はあります。私たち人間の体には自己治癒能力が備わっているのです。その力をサポートするために、痛みを取り除くブロック療法などを駆使した療法を取り入れてみることもできるということを知っていただければ幸いです。

 これでこの連載はおわりますが、これまでお付き合いくださりありがとうございました。 =おわり

西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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