日本のエーザイとアメリカのバイオジェン、2つの製薬会社が共同開発しているアルツハイマー新薬「レカマネブ」が、全米で大きな反響を呼んでいます。病気の進行を抑える初めての画期的な治療薬として、多くのマスメディアが取り上げています。一方で、医療関係者からは懸念の声も上がっています。
「レカマネブ」はアルツハイマーの進行を抑える薬です。アルツハイマー病は、脳にアミロイドβ(ベータ)と呼ばれるタンパク質が溜まり、神経細胞が傷つけられることで、認知症の症状が発生すると考えられています。アメリカには580万人のアルツハイマー患者がおり、その数は2060年までになんと3倍になると予測されています。
両者は先月28日、「最終段階での臨床試験で、薬を投与されたグループでは症状の悪化が27%抑えられた」、すなわち有効性が確認できたと発表しました。さらに2023年末までに、日本や欧米で承認申請をする方針を明らかにしました。
この発表にどれほどインパクトがあったかは、バイオジェンとエーザイの株価が一気に跳ね上がったことからも伺えます。
一方アメリカの科学者は、実用化に大きな期待を寄せると同時に、懸念も示しています。
その理由は、同じバイオジェンとエーザイが以前開発したアルツハイマー薬、アデュカヌマブに関する論争です。FDAアメリカ食品医薬品局は昨年、臨床試験での有効性が確認されないまま、「追って証明する」という条件付きで、アデュカヌマブをスピード承認しました。異例の承認で、FDAとバイオジェン社との癒着も囁かれているほどです。また審査が正当だったかどうか、未だ連邦取引委員会の調査対象となっています。
アデュカヌマブの実際の使用に対しても、アメリカの公的高齢者保険(メディケア)が、「承認された比較研究に参加している患者のみに、保険を適応する」という制限をかけています。そうでない場合は、年間400万円もの高額な薬代を自己負担することになり、こうした状況も、新薬に対する懐疑的な見方につながっています。
両社は今後、新薬レカマネブの治験の結果を医療誌に掲載し、より多くの研究者と共有していきたいとしています。その結果、今度こそ有効性がはっきりと証明された形で承認され、1日も早く多くのアルツハイマー患者の希望となることが、強く望まれています。