医者も知らない医学の新常識

「バイアグラ」でアルツハイマー病の発症リスクが69%低下

バイアグラ(C)日刊ゲンダイ

 バイアグラ(シルデナフィル)は、陰茎の血流を増加させることで勃起障害(ED)の治療に使用される薬です。しかし、その目的以外に肺動脈性肺高血圧症という、心不全の原因となる血管の病気の治療薬としても使用されています。バイアグラはホスホジエステラーゼ阻害剤という薬剤のひとつで、血流を改善する作用があり、陰茎ばかりでなく他の臓器の血流を増加させることにより全身的な作用を持つ薬でもあるのです。その多彩な健康効果が今、非常に注目されています。

 たとえば、心臓に病気を持つ人がバイアグラを使用していると寿命が延長し心臓の発作も減少したという報告があります。また、生活習慣病の代表である糖尿病の発症を予防する可能性があるという研究結果も報告されています。

 さらに、今年の「ネイチャー」系の老化の専門誌には認知症についての研究結果が掲載されています。723万人のアメリカ人の医療データを解析したところ、バイアグラを飲んでいる人は、飲んでいない人と比べてアルツハイマー病になるリスクが69%も低くなっていたというのです。基礎実験ではバイアグラの成分に脳神経の老化を抑えるような効果も確認されています。

 一方で、一部のがんはバイアグラで増えるという報告もありますから、まだ安易に使用することは危険ですが、これから研究が進めば、バイアグラの成分で老化予防という可能性もあるかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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