秋の夜長にぐっすり眠るには…照明を消して「光」を管理する

写真はイメージ
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 秋も深まって寝苦しさから解放され、ぐっすり眠りたいと思っているのになかなか寝付けないうえ、朝もすっきり起きられない……。そんな悩みを抱えている人は「光」を意識したほうがいい。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に詳しく聞いた。

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 われわれの睡眠には、睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」が大きく関わっている。夜間になると急速に増加し、体温や血圧を下げて心地よい眠気を誘発したり、質の高い睡眠を持続させる作用がある。

「メラトニンは、日光や照明などの『光』を網膜が感知すると減少し、わずかな光でも浴びている時間が長ければ分泌が抑制されてしまいます。メラトニンは入眠から3時間後に分泌のピークを迎えます。そのため、照明をつけたまま寝ると睡眠の質が下がり、翌朝起きた時も疲れが残ってしまうのです」

 メラトニンは500ルクスより暗くなると分泌され始める。500ルクスは、オフィスや家庭で一般的に使われている白色蛍光灯の明るさで、その下に3時間いると、分泌されるはずのメラトニンが50%減るという実験結果もある。

 また、米ノースウエスタン大の研究では、街灯の差し込み光や豆電球程度の明かりでも、睡眠時の呼吸、心拍数、インスリン感受性、メラトニンの分泌などに影響を与え、睡眠の質を低下させると報告している。つまり、寝室の照明は完全に消して、真っ暗にしたまま眠るのが理想的なのだ。

「別の研究では、就寝時に浴びる光は子供の近視に関係することがわかっています。真っ暗な環境で寝ている子供は将来的に近視になる割合が10%程度でしたが、豆電球では34%、照明をつけていると55%に上昇するという報告があるのです。就寝時の光がどうして近視につながるかについての詳しい仕組みはわかっていませんが、わずかな光でもわれわれの目に何らかの影響を与えるのはたしかといえるでしょう」

 照明はもちろん常夜灯も消す。さらにカーテンの隙間から差し込む光を防ぐため遮光カーテンを選んだうえで、カーテンの隙間をテープや洗濯バサミなどでしっかり留める。

 布団は窓から離れた場所に敷き、ベッドの位置を移動できない場合は枕の位置を窓からの光が当たらない場所に変更して、なるべく光の影響を受けにくくしたい。

起床時は「光」を浴びることが大切(写真はイメージ)
起床時は「光」を浴びることが大切(写真はイメージ)
慣れない場所では「月明かり」程度に抑える

「ただし、完全に照明を消した真っ暗な環境では不安や恐怖、焦りを感じて眠れない人もいます。人間は安心と安全が確保された場所でなければ、本能的に落ち着いて眠れなくなってしまうのです。ですから、ホテルや宿泊先など慣れていない場所では、部屋を真っ暗にはせずに、照明を月明かり程度、人影は認識できるが誰かはわからないくらいの明るさまで落として就寝するのがいいでしょう」

 日常的に過ごす自宅の寝室であれば、真っ暗にして寝るのが理想的だが、どうしても不安な場合は、電灯などの簡易的な照明機器を使って顔よりも下の位置だけを照らすようにして、慣れてきたら徐々に暗くしていく。

「照明は白色の蛍光灯ではなく、オレンジ色などの暖色系の電球が望ましい。最近はLED電球も増えていますが、LEDのブルーライトを浴びているとメラトニンが減ってしまうという報告もあります。オレンジやサクラ色といった暖色系のLED電球も元々の光は青色ですし、蛍光灯にもブルーライトが含まれているので、質の高い眠りを妨げる可能性があります」

 真っ暗あるいはなるべく暗くした寝室で就寝しても、起床時は「光」を浴びることが大切だ。われわれの体は光を浴びると「セロトニン」という神経伝達物質の分泌をはじめ、脳と体を覚醒させる。そして、夜になるとそのセロトニンからメラトニンが合成され、自然に眠れるようになる。そのため、朝に光を浴びてセロトニンをしっかり作っておく必要があるのだ。

「日の出に向けて徐々に明るくなっていくタイミングに合わせ、われわれは自然に目覚めていきます。ただ、窓を遮っている真っ暗な部屋では光を感知することはできません。朝、アラームで目覚めた時点でカーテンを開け、窓から光が差し込むようにするといいでしょう。最近は、起床時間に合わせて徐々に明るくなっていくようにタイマー設定できる照明機器が登場しているので、そうしたタイプを利用するのもおすすめです」

 質の高い睡眠のためには「光」をコントロールすべし。

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