「睡眠時無呼吸症候群」重症と診断されCPAP治療を5年継続…50代記者の現在

「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の治療で使用される装置「CPAP」
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の治療で使用される装置「CPAP」

「夢の中で呼吸の仕方がわからなくなって、苦しくて『プハーッ!』と目が覚めることが近ごろよくあるんだけど……」「うるさいくらい大きないびきをかいていたのに、急にやんだと思ったら息をしていなかった……そう家族から指摘された」──。最近、周囲からこんな話を聞く機会が増えた。50代記者は、同じような状況で「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)と診断され、5年近くCPAP(シーパップ)療法を続けている。その効果についてお伝えする。

 一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上起こるか、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上の場合、SASとされる。

 SASでは、熟睡できないため睡眠不足の状態になり、日中に強い眠気に襲われて大事故につながる危険がある。さらに、就寝中に体が低酸素状態になると交感神経が活性化し、心臓、脳、血管に大きな負担がかかる。内分泌系や免疫系にも支障を来し、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、高血圧、心房細動、糖尿病などさまざまな病気を起こしやすくなることがわかっている。

 SASは放置していると命に関わる危険がある。その治療で使用される装置が「CPAP」だ。エアチューブを接続した鼻マスクを装着し、装置本体からは適当な圧を加えた空気が送り込まれる。鼻から気道へ空気が送られることで気道が広がり、無呼吸やいびきが改善する。

 CPAPを開始するには、まず自宅で簡易型のPSG検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)を行う必要がある。

 梶本修身氏が院長を務める「東京疲労・睡眠クリニック」(東京都港区)を訪れ、検査装置を持ち帰って実施した。センサーキャップに人さし指を差し込み、手首に腕時計のような本体を装着して眠ると、睡眠のデータが記録される。

 後日、検査の結果を聞きに行くと、無呼吸と低呼吸の回数が1時間あたり59回もあることが判明。診断では、1時間で30回超が重症とされていて、このままでは就寝中に突然死する恐れもある。すぐにCPAPを始めることになった。

 CPAPを開始して1週間後、クリニックで本体のSDカードに記録された睡眠データを確認してもらうと、無呼吸は0回になっていた。低呼吸もほぼ見られず、いびきもほとんどかいていないという。

「これで、少なくとも寝ている間に突然死するリスクはないでしょう」

 梶本院長のそんな言葉にホッと一安心してその後もCPAPを継続。1カ月ごとに受ける定期診察でも、5年近く無呼吸0回が続いている。

■“二度寝”をしなくなった

 無呼吸がなくなって、最初に実感したのが「目覚めの良さ」だった。それまでは、朝いったん目覚めてから二度寝するのが習慣になっていた。しかし、CPAPを始めてからは、目覚めて二度寝しようと思っても、頭がスッキリしていて眠気がなく、眠れなくなった。

「それだけ、質の高い深い睡眠をとれているということです。CPAPは“相性”が合えば睡眠の質が劇的に改善されます。自分でもずっと使用していますが、初めて使った時は起床した時の爽快感に驚きました」(梶本院長)

 ほかにも効果を感じたのは「口呼吸をあまりしなくなった」ことだ。記者は幼少の頃から片方の鼻が詰まっていて、いつでも口呼吸だった。しかし、CPAPでは鼻を覆ったマスクから強制的に空気が送り込まれるので、口呼吸すると口から空気が抜けて呼吸がしづらくなる。つまり、就寝中はずっと口を閉じて鼻呼吸を続けることになる。

 そのため、目覚めたときに喉がカラカラに渇いていることがなくなった。また、口呼吸でなくても苦しさを感じないことに慣れ、日中も自然と口を閉じて鼻呼吸になっている時間が増えた。

 口呼吸は口の中が乾燥して唾液が口腔内の隅々まで行き届かなくなる。唾液には口腔内を洗浄・殺菌する役割があるため、口呼吸では歯周病や虫歯になりやすくなると報告されている。記者が定期的に通っている歯科医院でも、CPAPを始めてからは「歯の汚れや歯石が少なくなった」と指摘された。

 記者はCPAPをやめるつもりはないが、出張先や旅先で使うために装置を持ち運ぶのが面倒、どうしてもマスクが合わないといった理由から、いつかやめたいと考える人もいるだろう。

「無呼吸低呼吸指数(AHI)が20未満になって重症度が低下すると、CPAPが保険適用から外れるので、そのときは中止を検討するタイミングといえるでしょう。ただ、SASの原因はさまざまです。CPAPを中止して問題ないくらい改善するには、肥満の場合は減量が欠かせませんし、鼻や喉、顎の骨格に原因があるなら、それぞれに応じた手術が必要になってきます」(梶本院長)

 ちなみに、治療費は保険適用で簡易PSG検査が3000円、CPAPは月4700円ほど。これで快眠と健康を維持できるのだから、今後も継続するつもりだ。

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