老親・家族 在宅での看取り方

説明不足の主治医に不信感 「できる治療があるなら」と願う患者に…

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 私たちの診療所に相談に来られる患者さんやご家族の事情はさまざまです。それまで入院していた病院で告げられた予後を受け入れ、残された時間を自宅で過ごそうといわば覚悟を決められた方もいれば、主治医の説明に納得がいかず不信感を抱き、諦めずに他の治療の可能性を探っている方、セカンドオピニオンを模索しているが、その手だてが分からず悶々とされている方もいます。

 このセカンドオピニオンは、患者さんご自身が納得のいく治療方法を選ぶために、主治医とは違うまた別の医療機関の医師に、病気の診断や治療方針について第2の意見を求めるもの。病気に対する違う考え方や知識を知ることで、最善の治療方法を選択できるようにすることが目的で、より良い医療を受けるために患者さんに与えられた権利です。

 これまで在宅医療を始めるにあたって、患者さんやご家族が在宅医療の内容を理解し、納得することが重要であると伝えてきました。セカンドオピニオンを模索する患者さんに対しても、やみくもにさまざまな病院を渡り歩くドクターショッピングを防ぎ、患者さんの立場に立ったアドバイスができるのもまた、患者さんやご家族に寄り添う在宅医療ならではだと思っています。先日、奥さまと2人暮らしの80歳の患者さんがいらっしゃいました。肺がんで、多臓器転移しているステージⅣ。通院途中、何度か転倒し、ご夫婦ともに「もう病院へは行きたくない」と、当診療所への相談となりました。

「痛みはありますか?」(私)

「そうですね。昨日はふらつきました、足に力が入らなくて。転んでしまって。逆にね、病院に通っていた時に体調悪くなって」(患者さん)

「通って大変になったんですね」(私)

 通院困難とのことでしたが、お話を伺ううちに伝わってきたのが、病院や主治医への不信感。通院する病院が、病状や余命に関しての明確なインフォームドコンセント(医師が説明し、患者さんの同意を得ること)を行わないとのこと。「受ける治療があればまだやってみたい」という意思をお持ちでしたので、セカンドオピニオンの受診をお勧めしました。

「なにか他の治療ができたらなと思っています」(患者)

「セカンドオピニオンしても変わらないことがあるかと思いますが、自分で納得ができるんじゃないかなと思いますよ」(私)

「そうですね、訳わかんないままここまできちゃってるから」(患者)

「いろんなところにがんも転移もされているようなので、この状況だと余命は3カ月くらいだと思います。在宅医療になればがんの治療は行わないことになりますから、もし治療をまだ希望されるのなら、セカンドオピニオンで最初行きたかった病院でお話を聞いた方がいいと思います」(私)

「本人もまだ頑張りたいって言っていますから」(奥さま)

 今後どういうふうに病気に向き合っていくのか。患者さんやご家族が納得することは、心を安らげる上でも大切です。特に患者さんとスクラムを組んで療養を行う在宅医療ではなおさら重要になってくるのです。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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