アスリートの快眠術

東京五輪柔道金メダル ウルフ・アロンが大学時代から続ける90分間の仮眠の効用

ウルフ・アロン氏(26歳・柔道家)
ウルフ・アロン氏(26歳・柔道家)/(C)日刊ゲンダイ
ウルフ・アロン(26歳/柔道家)

 普段から寝つきはそんなに良い方じゃないと思います。試合が控えているときは眠れないときもあります。2021年の東京五輪前は、過度の緊張でなかなか寝つけない日もありました。

 一時期、睡眠サポート用のアミノ酸が含まれたサプリメントを飲んでいたこともありますが、逆に早く起き過ぎちゃったりして……。

 今は特別なことはしていませんが、極力、夜の12時前にはベッドに入って、7時間は寝るようにしています。6時間だと体がしっかり回復できていない感じがするんです。なるべく早く寝て早く起きた方が一日を有意義に使えますしね。

■43度のお湯で1時間

 寝る前には湯船につかるようにしてます。体が温まるだけでなく、副交感神経が優位になって、寝やすくなるんです。

 43度くらいの熱めのお湯で短くても20~30分。長いときは1時間くらい。温度は維持したまま。熱めの方が好きなんです。汗も出てスッキリします。

 お湯につかっているときは、リラックスすることが大事なので柔道のことは一切考えません。つかりながらユーチューブの動画をよく見てます。いろんな人が映画についてアレコレ考察しているものとか。ああいうのってなんか面白いんですよ(笑)。こういう考え方、見方があるんだなぁとか。固定観念にとらわれないよう、いろんな人の意見をインプットしてます。

 寝るときは抱き枕を抱いて、必ず右向きで寝るようにしています。枕にはあまりこだわっていません。抱き枕を体に挟むことで一番腰に優しい体勢になるのと同時に、胃の左側にある入り口を上向きにすることによって、胃酸が逆流しないなど、胃腸の働きをよくしてくれるんです。

 抱き枕はファイテン社の「ボディピロー」を3年間ほど使ってますね。「S字」の形をしているので抱きやすく、右向きに寝られるように設計されているようです。

 耳を圧迫しないように耳用の穴もある。国内外の遠征時は荷物の関係で持ち運びしづらいので、掛け布団を抱き枕のように抱いて寝ています。マットも(全柔連のスポンサーである)エアウィーヴのものを使っています。

 寝室の電気は消して、遮光カーテンを使ってます。テレビは置いていません。テレビを見ながら寝ちゃったりしますからね。

 寝つきが悪いときは、携帯で動画を見たりはしますが、横になってひたすら眠りにつくのを待ちます。眠りやすいヒーリング音楽を聴いたり、耳栓をしたりとかもない。寝酒も飲みませんね。飲んで寝ちゃうときはありますけど(笑)。

 眠れないからといって起き上がってテレビを見たりすると、かえって覚醒して眠れなくなったりする。ただ黙って横になっていれば、そのうち寝ていることもあるし、ベッドで横になるだけでも体は回復しますからね。

■抱き枕で必ず右向き

 睡眠といえば、練習日には必ず仮眠を取るようにしています。

 1日1回、午前のランニングやウエートトレーニングを終えて、昼食を取った後に90分間。東海大学時代からずっと継続しています。大学時代、授業の合間に寮で仮眠を取ると、より練習に集中できるなと気づいたのがきっかけです。

 なぜ90分かというと、僕にとってはちょうど起きやすいタイミングで、体はもちろん頭もスッキリするんです。睡眠にはレム睡眠、ノンレム睡眠の周期があるといわれていますが、90分が僕には合っているんでしょう。

 仮眠前には普段寝る前と同じく、シャワーを浴びて、寝る態勢を整えます。汗をかいたままだと眠れなかったり、眠りが浅くなったりします。せっかく仮眠を取るのですから、その時間を有意義に使わないともったいないですから。体を休めるだけでなく、脳も休めないと集中力が持たないし、練習の効率も悪くなってしまいます。

 寝相ですか? 抱き枕のおかげもあってか、あまり寝返りを打ってないと思います。たぶん……。

 基本的にずっと右を向いて寝てます。起きたときに枕がズレてたり、掛け布団がめちゃくちゃになってたりすることはないですから。寝相はいい方だと思います(笑)。

▽ウルフ・アロン 東京都出身。東京五輪100キロ級金メダリスト。6歳から柔道を始める。東海大浦安高、東海大を経て、現在は了徳寺大所属。

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