肝臓の病気のひとつに「肝炎」があります。肝炎の原因には、脂肪肝やアルコール、ウイルス感染などが挙げられます。今回お話しするC型肝炎は、ウイルスの感染によって引き起こされます。
肝炎は文字通り肝臓が炎症を起こす病気ですが、肝臓は修復力が高い臓器でもあるため、炎症と修復を何度も繰り返すことになります。その結果、肝臓は少しずつ硬くなっていき(線維化)、いわゆる肝硬変と呼ばれる状態になります。C型肝炎の場合、感染から30年以上経過し、高齢になってから肝硬変に移行するケースも多く見られます。いずれにしても、肝硬変は肝がんの原因になるので、肝炎の治療はとても重要です。
以前は、インターフェロンというクスリを使ってウイルスの排除が行われてきましたが、その効果は限定的で、インターフェロンのみで治療を行った場合の奏功率は20%にも達しませんでした。その後、インターフェロンと他の抗ウイルス薬を組み合わせることで奏功率はかなり上昇しましたが、それでもインターフェロン自体の副作用が強いこと、そしてインターフェロンは注射薬であることなどから、決して楽な治療とは言えませんでした。
それが2014年に直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が登場し、C型肝炎の治療は大きく変わりました。DAAは複数の抗ウイルス薬がひとつに配合されたクスリで、いくつか種類があります。C型肝炎ウイルスの特徴、肝炎の進行度、これまでの治療歴に応じて最も適したものが選択されます。DAAを用いたC型肝炎治療はインターフェロンの注射を必要としないので、インターフェロンフリー治療とも呼ばれています。驚くべきはその奏功率で、多くの場合、C型肝炎ウイルスを95%以上の確率で排除できます。また、インターフェロンのような強い副作用もないため、安全に治療することも可能になりました。
デメリットも、そこまで大きなものはありません。DAAはいずれも高価(1錠で数万円)ですが、医療費助成制度の対象になるため、患者本人の金銭的負担はそれほど大きくはなりません。
C型肝炎の治療に精通した専門医を探して受診しなければいけないという点は、手間的にデメリットと言えるかもしれませんが、これも安全かつ有効にしっかり治療をするということを考えると絶対に必要なことです。
ひとつ覚えておいてほしいのは、DAAでウイルスを排除できても、線維化してしまった肝臓は元には戻らないということです。そのため、できるだけ早い段階で治療をすることが重要です。肝がんの多くはC型肝炎が原因なので、DAAは結果として肝がん患者も大きく減らしてくれることでしょう。
高齢者の正しいクスリとの付き合い方