年齢を重ねるほど、病気をすると回復が遅くなるもの。加齢によって、病原菌や毒素などの体内侵入を防ぎ、病気と闘う抵抗力である免疫機能は低下します。そのため、シニアは一度体調を崩すと、回復にかなりの時間を要するのです。
とくに、大病や手術などで体に大きな負担がかかった場合は免疫力が衰え、感染症などの2次障害を引き起こすケースがあります。また、長期の入院は精神面においても大きなストレスがかかります。さらに長時間安静にしていたことから筋力が低下して転倒しやすくなったり、脳への刺激不足で認知機能が低下するといったリスクも高くなります。病気がきっかけで一気に体の機能を低下させないためにも、少しでも回復を早める食養生に努めたいものです。
中医学では病後や手術後は、人間の体内を流れる目には見えないエネルギーである「気」が不足した状態と考えます。気は体を温めて体温を保ったり、体表を巡って外部から体内に害を与えるものが侵入するのを防ぐなど健康維持にとって重要な働きをしています。病気になると気は大きく目減りします。いわば、気が充実していると元気、気が不足しているのが「病気」の状態なのです。
生命活動を維持するエネルギー源である気が足りていないと、疲れがとれない、やる気が出ない、食欲不振、胃の調子が悪いといったトラブルが起きやすくなります。しっかりと気を補うことが、体力回復のために重要なのです。
おすすめは鶏肉。気を充実させる作用が極めて高く、気を補うための薬膳によく用いられる食材です。古来、病後の滋養強壮によいとされています。消化吸収にも優れ体力増進を図れるので、日頃から疲れやすいという人に適した肉です。また、お腹を温めて下痢や吐き気を鎮め、食欲不振の改善にも役立ちます。
鶏肉の効能を存分に取り入れるためには、骨付き肉を使うのがおすすめです。スープや鍋物に入れて煮込めば、うまみが出るとともによりパワーアップすることができます。とくに冬は寒さから身を守るために気が失われやすい季節です。これから迎える厳冬を乗り切るためにも、コンスタントに取り入れるとよいでしょう。
鶏肉の体力回復効果を高めるには、同様に気を補う働きに優れたナガイモ、キノコ、栗を組み合わせるのがおすすめ。さらに回復力を強めたいときは、中華食材店や漢方薬局などで販売されている高麗人参やナツメをプラスするとより効果的です。 (水曜掲載)
■鶏肉高齢薬膳レシピ
鶏の滋養強壮スープ
気を補う鶏肉、ナガイモ、マイタケ、栗を組み合わせた滋養強壮に優れたスープ。手羽元を使ってしっかりと薬効を高めます。鶏のうまみで滋味あふれるスープは、免疫力アップにもおすすめ。
【材料】2人分
●鶏手羽元 250グラム
●ナガイモ 10センチ
●マイタケ 1パック
●むき甘栗 10粒
●ショウガ 1かけ
●酒 大さじ2
●サラダ油 適量
●塩・こしょう 適量
【作り方】
鍋にサラダ油を熱し、塩・こしょうをした鶏手羽元を入れ表面をこんがり焼く。水3カップと酒を加え、煮立ったらアクを取り、薄切りにしたショウガ、半月切りにしたナガイモ、マイタケ、甘栗を加えて火を弱め30分煮る。塩・こしょうで味を調える。
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