高齢者の正しいクスリとの付き合い方

目薬をいくつも使っている人は立て続けに点眼してはいけない

目薬と目薬の間は5分ほど空ける
目薬と目薬の間は5分ほど空ける(C)日刊ゲンダイ

 目薬(点眼薬)には多くの種類があり、白内障、緑内障、結膜炎などさまざまな目の病気に使われています。特に高齢になると2~3種類の目の病気を持っているケースもあるため、複数種類の目薬を使っている方も多いのではないでしょうか? そこで、今回は目薬の使い方についてお話しします。

 まず、目薬を点眼したときに目をパチパチする方がいらっしゃいますが、これはじつはちょっと問題があります。目をパチパチすることで、せっかく点眼したクスリの成分が目の外に流れ出てしまう可能性があるのです。そうならないために、点眼した後は1~2分程度そっと静かに目を閉じておくとよいでしょう。ぎゅっと目を閉じると、やはりクスリの成分が流れ出てしまうため、あくまでそっと閉じてください。また、基本的に目薬は1滴で十分です。なんとなく物足りないからといって2滴、3滴と点眼しても、結局、クスリがあふれ出てしまうだけです。

 複数種類の目薬を点眼する必要がある場合、立て続けに点眼したくなる方もいらっしゃるでしょう。しかし、目薬は点眼してすぐに効果が出るわけではなく、クスリの成分が目に浸透することで効果を発揮します。複数種類の目薬を立て続けに点眼してしまうと、浸透しきれなかった分が目からあふれ出てしまいます。また、それによって目に浸透するクスリの成分の量も少なくなってしまい、結果としてクスリの効果が低下します。

 こういったことを防ぐために、目薬と目薬の間は5分ほど空けるようにしましょう。5分あればクスリの成分のほとんどが浸透するので、次の目薬を点眼しても問題ありません。つまり、目薬の種類が増えれば増えるほど点眼にかかる時間も増えることになりますが、クスリの効果を十分に発揮して目を守るためには必要な時間だと理解して、しっかり正確に点眼していただけるとうれしいです。

 もうひとつ、目薬のボトルについてです。1本で両目に点眼するのは避けたほうが望ましいといえます。目には細菌が生息している場合があり、またそれが右目と左目で違っていることもあります。1本のボトルで両目に目薬を点眼し、仮にボトルの先端がまつ毛などに触れてしまうと、片方の目にしかいなかったはずの細菌が反対の目に伝染してしまう可能性があるのです。

 こうしたケースを防ぐためには、ボトルの先端をどこにも触れさせないというのが大原則となりますが、誰しも「あっ!」ということもあるでしょう。そのため、目薬のボトルごとに右目専用、左目専用を決めておくほうが安全です。

 目薬は正しい使い方ができて初めてその効果を十分に発揮します。いま一度、ご自身の点眼のやり方を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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