医薬品は日進月歩であり、年々新たなクスリが誕生します。下剤も例外ではありません。従来の下剤は「便をやわらかくする」クスリと、「腸を動かす」クスリの2種類でしたが、新たな効き方の下剤が誕生し、特に他の下剤で効果が十分に得られなかった患者に対して用いられるようになりました。
「ルビプロストン」という成分のクスリは、「便をやわらかくする」効果と「腸を動かす」効果を併せ持った下剤です。慢性便秘症に用いられ、よく効く下剤のひとつだと思いますが、注意点があります。それは、副作用として「吐き気」が現れることです。ルビプロストンの添付文書(医療従事者向けの説明書)の副作用の欄にしっかりと記載されていて、その発現確率は23%となっています。つまり、だいたい服用した5人に1人の割合で吐き気を認めるということで、なかなか高い頻度だといえます。もちろん、まったく何ともないという人のほうが圧倒的に多いので過度に心配する必要はありませんが、もしこのクスリを使っていて日常生活に支障を来すくらいの吐き気を感じているようであれば、クスリの変更を考えてもよいかもしれません。
消化液のひとつである胆汁酸は、通常だと胆嚢(たんのう)から腸管内に分泌された後、大部分が大腸に到達する前に体内へ再吸収されます。「エロビキシバット」という成分のクスリは、この胆汁酸の再吸収を抑え、結果として胆汁酸の多くが大腸に到達するようになります。胆汁酸には水分を引っ張る作用があるため、大腸の中の水分量が多くなり、「便がやわらかくなる」効果を発揮します。また、胆汁酸には腸の動きを活発にする働きもあるため、「腸を動かす」効果もあります。効果は比較的速やかに発揮され、副作用として腹痛などがありますが、「ひどい下痢になった」という声はあまり聞いたことがないクスリです。
「リナクロチド」という成分のクスリは、大腸の機能を促進する効果を持った下剤です。結果としては「腸を動かす」クスリのひとつにはなりますが、正しくは「腸の動きを整える」クスリです。リナクロチドの注目すべき点は、大腸の痛覚過敏を抑える作用も併せ持っていることで、便秘だけでなく腹痛を改善する効果もあります。これらの特徴から、慢性便秘症だけでなく、過敏性腸症候群(便秘型)にも用いられます。
エロビキシバットとリナクロチド、どちらにも共通する注意点があります。それは、空腹時、つまり食前に内服しなければならない点です。ここに煩わしさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
生活習慣を改善しても便秘が治らない場合には、こういった下剤を使う手もあります。やっぱりスッキリ出したいですよね?
高齢者の正しいクスリとの付き合い方