「睡眠時無呼吸症候群は太っている男性の病気」は大間違い チェックするポイントは?

日中の眠気が続く人は…
日中の眠気が続く人は…

 医療機器メーカーの「レスメド」が行った睡眠に関する調査によると、日本では睡眠の問題を抱えていると回答した人が58%と半数以上を占めたが、医療機関に相談する人は10%しかいなかった。

「日中、眠くて仕方がない」……。睡眠に何らかの問題を抱えているなら、一度は病院でその原因を調べた方がいい。睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるからだ。

「睡眠時無呼吸症候群は、上気道(鼻から喉までの空気の通り道)の閉塞の結果、起こる病気です」

 こう言うのは、虎の門病院睡眠呼吸器科医長の富田康弘医師。

 睡眠中は喉の緊張が緩むため、誰でも空気の通り道が細くなるが、通常は問題が生じない。しかし上気道が狭くなりすぎる、または完全に閉じてしまうと、酸欠になり睡眠が分断される。これが睡眠時無呼吸症候群(正確には閉塞性睡眠時無呼吸症候群)だ。

「睡眠時無呼吸症候群の患者さんは年々増えており、その名前も知られるようになっています。しかし、睡眠時無呼吸症候群の治療であるCPAP(シーパップ)を受けている人は約60万人。CPAP治療の対象者は400万人以上とみられているので、治療を受けている人は、氷山の一角でしかありません」(富田医師=以下同)

 その理由として考えられることの一つが、「睡眠時無呼吸症候群=太った男性の病気」という思い込みだ。確かに、肥満は睡眠時無呼吸症候群のリスク因子。肥満の人は上気道にも脂肪が沈着しており、もともと上気道が狭いからだ。

 しかし、日本人をはじめとするアジア人は、痩せているのに睡眠時無呼吸症候群、という人が少なからずいる。

「アジア人は顎が小さいため、痩せていても、空気の通り道が狭くなりやすい」

「太っていないから/女性だから、大丈夫」は大間違いなのだ。それ以外にも、「鼻の通りが悪い」「扁桃が大きい」「舌が大きい」「首が太い」が、睡眠時無呼吸症候群の原因になる。

 睡眠時無呼吸症候群を疑うべき症状は、「夜中の大きないびき」「日中の強い眠気」「時々呼吸が止まっている」「起床時に頭痛やだるさがある」。日本人は睡眠時間の短さでは世界トップなので、日中の強い眠気が必ずしも睡眠時無呼吸症候群(または別の睡眠に関連する病気)によるものとは言えないが、検査を受けないことには判別がつかない。

■CPAPは短時間睡眠では効果不十分

 睡眠時無呼吸症候群は全身にさまざまな悪影響を与え、合併症を引き起こす。例えば、高血圧。睡眠時無呼吸症候群の患者の50%は高血圧を合併しているといわれている。

 また、無呼吸で低酸素状態になるとインスリンの働きが悪くなり、糖尿病を発症しやすくなる。

 肥満で睡眠時無呼吸症候群の人は、肥満に高血圧、糖尿病が合わさると心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくなる。いずれも死に至ることもある病気。睡眠時無呼吸症候群は死亡リスクが高く、中等症以上を8年間放置すると死亡率が約37%という報告もある。

 睡眠時無呼吸症候群の最も重要な治療は、前述のCPAPだ。鼻にマスクをつけ、特殊な機械で圧力をかけて空気を送り込む。

「ただ、このCPAPは『使えば病気解決』ではない。使用時間4時間以上の日が70%以上占めるようにしなくてはならない。CPAPの平均使用時間が3.3時間の人は、長期的に使っても心臓病のリスクを減らせないという研究結果もあります」

 治療を開始して3年半の女性は、CPAPで熟睡できるようになり、昼寝が不要となった。自分の睡眠を見直すようになり、「睡眠を◎時間取るために、▲時に寝なくては」と、睡眠をたくさん取れるための生活リズムを組み立てられるようになったという。

 CPAPを使っても、睡眠時間が短ければだめ。睡眠の問題を理解し、質の改善とともに、睡眠時間を長くしていくことが重要だ。

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