健康長寿に役立つ高齢薬膳

【なつめ】「血」を増やして「心」を養い物忘れを改善させる

ドライフルーツと黒豆のヨーグルト和え
ドライフルーツと黒豆のヨーグルト和え(C)日刊ゲンダイ

 最近、人の名前が出てこない。あれ、メガネはどこに置いたっけ……。気になる「物忘れ」。脳は残念ながら年々、神経細胞が減って萎縮していきます。記憶力は20代をピークに低下し、40代には前頭葉の萎縮がみられます。またストレスは大きく脳に影響を及ぼし認知機能を下げる原因に。50代に入ると動脈硬化による脳の血流低下、加えて加齢による判断力や適応力の衰えも物忘れを悪化させる要因になります。

 もういい年だし……とあきらめてしまいがちですが、脳を滋養する食養生は物忘れの防止・改善に大いに役立ちます。日々の食事を見直して、いつまでもシャープでクリアな思考力の維持に努めましょう。

 中医学では物忘れは「心」と呼ばれる臓器との関係が深いと考えます。心は血脈と血液循環機能をつかさどるとともに、意識や思考、感情などの精神活動をコントロールするとされています。つまり、脳の働きは心と連動するものと考えます。

 心の働きが衰えると、記憶力、思考力、判断力が低下して、物忘れを引き起こしやすくなるのです。カギのかけ忘れ、エアコンやガスの切り忘れ、落とし物といった「うっかり忘れ」が増える傾向もあります。

 そして心を滋養するのは、「血」。栄養を与える液体である血が不足すると脳の働きも低下して頭がぼんやりしたり、言葉が出にくくなるといった症状が現れるのです。

 脳に栄養が不足した状況が続くと、加齢による記憶力の低下ばかりか、認知症を引き起こすリスクも高まります。改善のためには、心の働きを高めて、血を増やす食材を取り入れることが大切です。

 おすすめは、なつめ。血を増やして心を養い、物忘れを改善、精神を安定させる優れた効能があります。不眠、うつにも効果的です。

 なつめは薬膳ではとてもよく使われる食材で、たしかにそのパワーは絶大。中国ではとてもポピュラーなフルーツで、「1日3個食べると年を取らない」とまでいわれ、乾燥させたものが「大棗」という生薬として使われています。人間のエネルギー源である気を補い、滋養強壮、疲労回復、免疫力アップに優れた効能があります。また、花粉症の改善にも大変威力を発揮するので、シーズンにはぜひ取り入れてもらいたい食材です。

 使い方は難しくありません。中華食材コーナーにある、干したなつめを使用します。手軽なのは「なつめ茶」。鍋に水1カップ当たり5個程度、包丁で半分くらいに切る、またはちぎって入れ、沸騰したら火を弱め15分ほど煮出します。

 あるいは、汁ものや煮物に入れて、煮るとほんのりした甘みが加わり「みりん」代わりに使えます。ほかにも、赤ワインや焼酎に漬け込んで「なつめ薬膳酒」にするのもおすすめです。

 なつめの物忘れを改善する効果を高めるためには、同じく血を増やす働きのあるブドウ、クコの実、黒砂糖などと組み合わせるとよいでしょう。また、老化をつかさどる臓器「腎」の働きを高め、脳のアンチエイジングに役立つクルミ、黒豆をプラスするとより効果的です。

■なつめ高齢薬膳レシピ

脳トレドライフルーツと黒豆のヨーグルトあえ

 血を増やし、心を養うなつめ、ブドウ、クコの実、腎をサポートするクルミ、黒豆、黒砂糖を組み合わせた、脳パワーアップ効果の高いデザート。なつめの黒糖煮は、多めに作ってお茶請けにしたり、パンにのせるのもおすすめ。

【材料】2人分
●なつめ  50グラム
●水  1カップ
●黒砂糖  大さじ2
●蒸し黒豆  60グラム
●クルミ  大さじ2
●レーズン・クコの実  大さじ1
●プレーンヨーグルト  大さじ4

【作り方】
 なつめは半日ほど水につけてもどす。鍋になつめ、もどした水、黒砂糖を加えて加熱し、沸騰したら弱火で30分程度、とろみがつくまで煮る。冷めたら、ボウルに黒豆、レーズン、クコの実、ヨーグルトを入れて、混ぜ合わせる。器に盛り、砕いたクルミをのせる。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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