30年ぶりの肥満薬の正体は2型糖尿病用注射薬…11月22日から公的保険の対象に

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 肥満に苦しむ人に朗報だ。11月22日から約30年ぶりに肥満症の新薬「ウゴービ®」(ノボノルディスクファーマ社、皮下注射薬)が本格的に医療現場で使われることが決まった。既に今年3月、肥満症の薬として承認されていたが、厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会は15日、公的医療保険の対象の薬として承認した。薬価(公定価格)は成分量に応じて5段階(0.25mg~2.4mg)に分かれ、1876円~1万740円となった。

 対象となるのは、「肥満症」と診断され、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかの持病があり、食事・運動療法で効果が得られない人で、肥満度を示す体格指数(BMI)が35以上か、27以上で運動障害などがある人。単に太っている、というだけでは投与対象とならない。

■空腹を弱め、満腹感を高める

 実はこの薬、一般名を「セマグルチド」と呼ぶGLP-1受容体作動薬で、既に複数承認されていて、日本では糖尿病治療薬として実用化されている。現在発売中の日刊ゲンダイ臨時特別号「糖尿病 治る 良くなる 働ける」でGLP-1受容体作動薬を詳しく解説している薬剤師の青島周一氏が言う。

「GLP-1は『グルカゴン様ペプチド-1』と呼ばれる物質で、インクレチンと総称されるホルモンの一種です。膵臓のβ細胞に働きかけることでインスリン(血糖値を下げるホルモン)の合成や分泌を促す一方で、膵臓のα細胞に働きかけることで血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制します。つまり、この薬は二重の意味で血糖値を下げるのです。また、胃からの排泄抑制による満腹感の増大、中枢性食欲抑制による食欲の低下をもたらします。そのことで血糖を下げつつ、やせることもできるのです」

 しかも、このGLP-1受容体作動薬は新たな知見が次々と明らかになっていて、心臓病の予防効果や総死亡率の低下を示す研究結果も報告されつつある。

 ただし、薬である以上、一定の確率で副作用が発生する可能性がある。過度な摂食制限を併せて行えば、重大な低血糖の発生リスクがあり、GLP-1受容体作動薬には、吐き気や嘔吐などの胃腸障害の副作用が知られている。適応のない使用は厳に慎むべき薬であることは覚えておこう。

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