上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

肝臓と心臓の関係…脂肪肝は心臓疾患リスクをアップさせる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 近年、飲酒が関係しない脂肪肝「非アルコール性脂肪性肝疾患」(NAFLD)が問題になっています。脂肪肝というのは、肝臓の細胞の5%以上に中性脂肪がたまった病態のことで、飲酒を原因とする「アルコール性脂肪肝」と、飲酒を原因としない「非アルコール性脂肪肝」があります。非アルコール性脂肪肝の患者数は推計1000万~2000万人と増加傾向にあり、NAFLDから肝硬変や肝臓がんに進行する危険だけでなく、心血管疾患のリスク因子としても知られているため、注視されているのです。

 国内外の研究では、NAFLDの人は、一般の人に比べて心血管疾患を起こすリスクが約2倍多くなることが報告されています。またNAFLDの人が心不全を新たに発症するリスクは、そうでない人の1.5倍多いこともわかっています。

 NAFLDがどのように心血管疾患と結びついているのかについては、はっきりとわかっていませんが、NAFLDの背景には、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病があり、それらは心血管疾患のリスク因子でもあるため両者は大きく関係していると考えられています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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