病気と共に生きていく

“エリテマちゃん”…病気はもう一人の自分として捉えている

美術コンクール「アッヴィアートプロジェクト」で佳作受賞
美術コンクール「アッヴィアートプロジェクト」で佳作受賞(提供写真)
多賀谷裕子さん(41歳)=全身性エリテマトーデス

 最初に不調を感じたのは10年前の冬です。手首の関節が痛くなり、湿布を貼ったりしていたんですが、2週間ほど経った頃には全身の関節が痛くなり、少し動いただけでも激痛が走るようになりました。

 横になったら起き上がれないほどのレベル。1人暮らしをしており、母親に来てもらいお風呂に入るなど手伝ってもらっていたのですが、ずっと来てもらうわけにもいかない。とはいえ、痛みで1人では生活できない。当時、別の病気でお世話になっていた東京大学医学部付属病院に入院し、多種多様の検査を受けました。なかなか原因がわからず、「全身性エリテマトーデス(SLE)」と診断されたのは入院して2カ月ほど経ってから。指1本の関節を動かすだけでも激痛が走り、お箸すら持てないまでになっていました。

 病名を告げられた時、「えっ」と驚くより、「ようやく病名がわかった。これで痛みが消えるかもしれない」という安心感が勝りました。ステロイドの内服が始まり、2~3日で痛みが引き、数カ月ぶりに痛みを忘れて眠れました。少しずつステロイドの量を減らしていき、退院時には季節は春になっていました。

 SLEは治らない病気。薬で痛みが少し治まったとはいえ関節は痛いし、微熱はあるし、骨がもろくなっているので骨折はしょっちゅう。ただ私は、この病気になったのは残念ですが、病気をもう一人の自分と捉えています。“エリテマちゃん”も頑張っているし、と。

 実は昨年、再燃したんです。全身に発疹が出て、シャワーを浴びただけでひどい痛みで、緊急入院。ステロイドの大量投与の治療を受けました。入院中に眠れず、何がしたいか考える中で、改めて前向きに、好きなことをやっていこうと決めました。このまま入院と退院を繰り返す人生はつまらない。自分の好きなことは何? それは絵だ、と。昔から好きで自己流で描いていた絵を、本気で始めようと。写真の絵は、「人生は良いことばかりじゃない。悪い時もある。でも、悪いことばかり続かない」という思いを込めました。

 主治医からは「将来は車椅子になるかもしれない」と言われています。でも今は歩けているし、車椅子になったらその時はその時。車椅子でも、絵は描けます。絵は私の命。やりたいことがある私は幸せです。二科展の応募を目指して、今は体調と相談しつつ、絵を描く日々を送っています。

【全身性エリテマトーデス:免疫系の異常で本来、体を守る免疫系が自分自身を攻撃し、全身のさまざまな臓器に炎症や障害を起こす。症状は多彩で、よく見られるものとしては発熱、全身倦怠感、関節痛、皮疹、光線過敏症、脱毛、口内炎。顔面に出現する蝶の形をした皮疹(蝶型紅斑)も多い】

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