正解のリハビリ、最善の介護

評価や実績の高い回復期病院を判断するための指標はある?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏
「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 より良い回復期病院を見極めるポイントについて、ここ5回にわたってお話ししてきました。病気やケガの治療後に適切なリハビリを受けるためには重要なポイントですから、あらためて簡単に整理しておきます。

 まず、①「自宅から近い(それほど遠くない)施設」かどうか。回復期病院を退院後、外来リハビリのための通院が必要になるからです。

 次に、②「病院内がきれいできちんと整理整頓されているか、清掃が行き届いているか、変な臭いがしないか」も重要です。病院側やスタッフが患者さんと気持ちよく向き合っていて、やる気があるのかどうかの判断材料になります。

 肝心なリハビリに関しては、③「1日最大3時間、週7日毎日リハビリを行ってくれるのか」④「リハビリを行う時間以外の日中は、ベッドに寝かせることなく起こしてくれるのか」を必ず確認してください。

 適切なリハビリでは「起こす」ことが重要です。リハビリと食事を含めて8時から19時までの日中はしっかり起こしている施設と、リハビリと食事以外の5時間、就寝時間はすべてベッドに寝かせている施設では、回復の度合いや成績が大きく変わってくるのです。

⑤「力量があるリハビリ主治医が在籍しているか」も大切なポイントになります。主治医は、個々の患者さんの病状を的確に把握して、「その患者さんはどこまで回復できるのか」というゴールをしっかり予測できなければなりません。その力量がなければ、当初の予測よりも回復の度合いが上がってこない場合に修正して対処することができず、「この程度の回復でも仕方がないから、諦めてください」で終わってしまいます。主治医の力量は、患者さんやご家族の将来を左右するくらい重要なのです。

 来院される患者さんの中には、脳の損傷の度合いや認知機能の低下、全身状態の不良などにより、リハビリを行っても残念ながらそれほど回復が望めないケースもあります。その場合は、目が開くようになる、笑顔が出る、うなずくようになるだけかもしれませんが、主治医は回復が難しい状態を本人やご家族に伝えなければなりません。

 治療計画を考えない主治医は、ゴールを曖昧にしたままリハビリを行い、回復せずに治療を終えて「一生懸命やったのですが、回復できなかったので仕方がありません」となってしまいます。患者さんやご家族にしてみれば、「なんで最初からそう言ってくれないのか」という憤りを感じるでしょう。だからこそ、リハビリ主治医はゴールを予測できるだけの力量が必要なのです。

■入院料「1」はスタートライン

 では、先に挙げた5つのポイントを実際にチェックするにはどうすればいいでしょうか。まずは、インターネットや書籍を参考にして、近隣で評判や評価が高い回復期病院を候補に挙げます。これが①と③のポイントです。

 回復期病院の評価や実績を判断する指標のひとつに、「リハビリテーション実績指数」というものがあります。入院期間にどれだけ効率的に日常生活を改善できたかを示す指標で、FIM(機能的自立度評価法=日常活動を行う際の個人の自立レベルを評価する)の改善度を、在院日数をリハビリ算定日数上限の数値で割って計算します。

 この指数の値が40点以上あり、かつ在籍スタッフの種別や人数などの基準を満たしている施設は、診療報酬における「回復期リハビリテーション病棟入院料」が最高の「1」となります。以降、指数の値が下がるごとに、入院料は2、3、4、5、6と区分されます。つまり、入院料「1」の回復期病院は一定の評価が与えられているという判断材料になるのです。

 ただし、現時点で「1」に区分される基準は緩く設定されているため、全国の回復期病院の6~7割くらいが「1」に該当します。実績指数が50点以上の施設は頑張っている施設と考えていいでしょう。

 入院料「1」の回復期病院を選ぶことをスタートラインにして、そのうえで、実際に施設の見学に行き、②院内の清潔環境と、④日中の離床状況をチェックしてください。④ができている施設はおすすめです。

 力量のある主治医が在籍しているかどうかについては、直接尋ねても「いい先生ですよ」といった回答しかもらえないでしょう。ですから、治療を受けた急性期病院の担当医から回復期病院を紹介してもらう際に、「きちんと人間力を回復させてくれるリハビリの先生がいる病院をお願いします」とオーダーするといいでしょう。

酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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