健康長寿に役立つ高齢薬膳

【きんかん】「気」を巡らせて消化を促進しお腹の張りを改善

きんかんと切干大根のさわやかサラダ
きんかんと切干大根のさわやかサラダ(C)日刊ゲンダイ

 お腹が張ってスッキリしない……。長く続く「腹部膨満感」はつらいもの。腹部膨満感とはお腹が張ったり、腹部が圧迫されていると感じる状態をいいます。満腹感とは異なり、あまり食べていなくても張った感じが続きます。多くは、胃腸内にガスが過剰に発生する、あるい十分に排泄されないことから起こります。

 原因として、ガスの発生を起こしやすい食物繊維や脂肪を多く含む食べ物を過剰に摂取した場合があげられます。便秘や過敏性腸症候群もガスの過剰発生を引き起こす大きな要因です。

 そのほか、食事とともに空気を大量に飲むことで胃腸に空気がたまる「呑気症」、胃酸や消化酵素が食道に逆流する「逆流性食道炎」でも、腹部膨満感が現れやすくなります。また、ストレスも症状の悪化につながります。

 シニアは腸の蠕動運動が弱まることで、消化管内にガスの発生、吸収、排泄に障害が生じ、腹部膨満感を引き起こしやすい傾向があります。また、食事量の低下、筋力や腸の働きが衰えることから便秘になりやすいため、お腹の張りに悩まされる場合も多くみられます。

 腹部膨満感は食欲の低下につながります。栄養不足になって身体機能が衰え、新たな不調を生まないためにも早めの改善を図りましょう。

 中医学において、腹部膨満感は人間のエネルギー源である「気」の流れが悪くなっていることで引き起こされる場合が多い、と考えます。気は全身をくまなくめぐっているのが正しい状態。気が滞ると腹部膨満感が起こり、ガス、げっぷが多くなります。また、気が滞ると「張った痛み」を感じやすく、胃やわき腹が張って痛む、肩がパンパンに張って痛む、といった特徴もみられます。

 気の巡りは自律神経と重なっています。気の流れが滞ると自律神経のコントロールがうまくいかず、精神状態が不安定になってストレスの影響を受けやすくなり、イライラしたり、情緒不安定、不眠といったトラブルも現れやすくなります。

 改善のためには、気の流れをスムーズにする食材を取り入れることが大切です。

 おすすめは「きんかん」。さわやかな香りが気を巡らせて、消化を促進しお腹の張りを改善してくれます。胃もたれ、食欲不振にも高い効能があります。ストレス解消にも効果大で、ストレスによる肩こり、胃の不調にも役立ちます。さらに、風邪の予防、咳止め、喉の痛み、痰のからみにも威力を発揮。冬場にはしっかりと取り入れたい果物なのです。

 きんかんは皮に高い薬効があります。以前は、苦いため甘露煮にして食べることが多かったのですが、近年は糖度が高く生で皮ごと食べられる「完熟きんかん」も人気。きんかん生産量日本一を誇る宮崎県のブランドきんかん「たまたま」などがあります。そのまま丸かじりして、しっかりと効能を取り入れましょう。

 きんかんの腹部膨満感改善効果を高めるには、同じく気を巡らせる効能が高いセロリ、大根、パセリなどと組み合わせるとよいでしょう。

■きんかん高齢薬膳レシピ

きんかんと切干大根のさわやかサラダ

 気を巡らせる効能が高いきんかんと、大根、セロリ、パセリを組み合わせたサラダ。大根は切干大根を使用。皮むき不要で手軽に作れます。きんかんのさわやかな風味で、ワインにも合う味わいです。

【材料】2人分
●きんかん 4個
●切干大根 15g
●セロリ 1/2本
●パセリ  適量
●A(オリーブオイル/白ワインビネガー=大さじ1、レモン汁=大さじ1/2、塩=適量、あればクミンシード=適量)

【作り方】
 切干大根は水で戻し、ざく切りにしてボウルに入れる。縦半分に切ってから、斜め薄切りにしたセロリ、刻んだパセリ、皮ごと薄切りにしたきんかんも加え、混ぜ合わせたAを入れてあえる。

池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

関連記事